論よりダンゴ

論よりダンゴ
【タイトル】  論よりダンゴ
【著者】    山藤章二
【出版社】   岩波書店
【発行年月日】 2006年3月16日
【版型 頁数】 四六版 262頁
【版 刷】   初版1刷
【ISBN】    4000025872
【価格】    1890円

【目次】
まえがき
1 い  一級幸福士 … 3
     イッセイ尾形への対し方 … 7
  ろ  ろ過とは … 10
  は  「バカ」を愛す … 13
  に  似顔絵とイラストレーション … 16
     二十世紀を決定した眼 … 18
  ほ  邦題よ、さらば … 22
  へ  ヘンな話 … 25
     ヘン歴 … 28
  と  東京あるき … 35
  ち  父親の哲学 … 41
  り  凛とした正月 … 45
  ぬ  盗人の八月十五日 … 48
  る  類は友を呼ぶ … 55
  を  をかしなかま … 59
2 わ  私の死亡記事 … 65
     わらじの哲学 … 68
  か  川田ミュージカルの幹と花 … 71
     肩書考 … 74
  よ  吉行淳之介さんと … 76
  た  第五の災難 … 81
     ダダイスト立川談志 … 85
  れ  レディース・アンド・ジェントルメン … 90
  そ  そんなに痩せたいか!! … 93
  つ  妻が見事に引いた3本の線 … 96
     疲れている人はいい人だ … 99
  ね  寝てもさめてもダニ-・ケイ … 102
  な  「なにものか様」に感謝する … 104
  ら  ラジオで修行 … 111
  む  むかし男といま女 … 116
     夢声翁の不機嫌 … 119
3 う  うっとうしい引力 … 125
     ウォーホル入門 … 129
  ゐ  井の中の蛙 … 132
  の  残したい日本の風景 … 136
  お  オウムとボランティア … 138
     大人になりきれない男たち … 141
  く  九鬼周造半かじり … 144
  や  流鏑馬の大統領 146
  ま  マンボNO.5 … 150
  け  経済オンチのつぶやき … 153
  ふ  ブックデザインの内側 … 157
  こ  「コレデモカ」の時代 … 163
  え  絵になる人がいた時代 … 168
  て  テレビが父親 … 176
4 あ  アメリカの匂い … 181
  さ  散歩の効用 … 187
  き  奇笑の時代 … 192
  ゆ  ゆらゆら … 199
  め  目の散歩(漫画文化論) … 202
     目の散歩(新聞漫画) … 207
     目の散歩(漫才) … 216
     目黒の三魔 … 222
  み  耳に砂 … 229
  し  品川大変 … 235
     志ん朝しのび歩き … 236
  ゑ  「ゑ」の時代のさしえ … 245
  ひ  ビジュアル・スキャンダル … 252
  も  物言う墓 … 257
  せ  政治家の顔 … 269
  す  水道の水 … 261
【コメント】
著者はイラストレーター、漫画家。武蔵野美大でキチンと絵の勉強をした人なので、非常に「個性的で美しい漫画」を書く人だという印象が強い。漫画家の間でも『山藤画伯』と呼ばれているらしい。絵だけでなくエッセイ、川柳にも長じており、第一生命の発行する通称『サラ川』(サラリーマン川柳傑作選、講談社)の選者でもある。このシリーズ大変に気に入っており、私のお気に入りの1つである。既に15巻が発行されており、愛読している。『東海林さだお』の本と同様に、疲れたとき、滅入ったときの癒しの書としてお世話になっている。
この本は各方面で書き溜めたエッセイをまとめるに際し、なんとそのタイトルを「いろは順」に編集したものである。この「いろは四十七文字すべて」という編み方が何とも“にくい“ですな。短いエッセイの集まりなので内容的にも難しくはなく、どこからでも読めるし、ちょっとした空き時間に読むのにいい本だ。
この著者に限らず、漫画家という人たちはなかなかによい意見をもっている人が多いように思う。漫画の起源、発生、成立の根源は社会批判だったということらしい。従って世の中の問題に対する風刺を絵にしたのが漫画であり、文章にしたのがエッセイということになるのだろうなきっと。
それにしても、『アカデミズムの岩波』と言われる天下の岩波書店がこの手の著者の本を出すのがおもしろい。エッセイ集はいくつも出しているだろうが、どれも何とか学の大先生が専門書の合間に書きとめたものがほとんどだろうと思う。従ってエッセイと言っても専門領域周辺に関するものが多いだろうから、かなり硬い内容になる。この辺がまた岩波らしい特徴だったと言えるのではないか。本書のような書き手をもっと増やし、より大衆性を狙った本の出版にもどしどし取り組んでほしいと思っている。