妻の歴史


<妻>の歴史
【タイトル】  妻の歴史 市立図書館より
        はてな年間100冊読書クラブ−No.071
【著者】    マリリン・ヤーロム
【出版社】   慶應義塾大学出版会
【発行年月日】 2006年4月10日
【版型 頁数】 A5版 506頁+39頁
【版 刷】   初版1刷
【ISBN】    4766412370
【価格】    6090円
【コメント】
出版ニュースに紹介されていた記事を読んで気になっていたが、高価なので市立図書館にリクエストしたら運良く購入の運びとなり、早速借りた。主として欧米における古代から現代までの、その歴史を論じる大著である。女性史、家族史、ジェンダー関連の読み物として位置付けていたが、気軽に読むにはあまりに冗長すぎるかなと感じている。
著者は米国スタンフォード大学女性・ジェンダー研究所上席研究員。筆者紹介にはあまり詳しいことが書かれていないが*1、ご主人は同じスタンフォード大学の、医学部名誉教授という記述があるのでかなりの年配だろうと思われる。
私の感想はというと、どうも長い記述が延々と続き、著者の主張が明確ではなく、一体結論は何なのとぶつぶつ言いながら読みすすめることになった。こういう長い文章の場合、論点の整理のため章末かどこかにその章の要約か結語をまとめるべきだと思う。実際最後までこの冗長さに付き合ったが、結論が良く分からないまま終わってしまった。最後の当たりに米国を中心とする女性、妻の有り方に関する議論というか世論の変遷の要約が少しあるが、それも紹介だけで、学会での議論や肝心要の著者の結語というか意見が盛り込まれていないようだ。研究者の著作なのだから、少なくとも自分の主張したい結論は明確に示すべきだろう。だからもっとしっかりと読み返さないと、今何が問題でどう考えるべきなのかが殆ど理解できない。何のための読書だったのかと思ってしまう。
というわけで、ちょっとがっかりの結果となった。もう少し議論を盛り込み密度を高めた内容だったらなと…・・・。
【目次】
日本語版に寄せて … 〓
謝辞 … 〓
はじめに … 妻は絶滅の危機に瀕した種か? … 1
第1章 古代世界における妻たち − 聖書、ギリシャ、ローマのモデル … 13
聖書の妻たち / 古代ギリシャの妻たち / ローマ時代の妻たち / 所有から限定的なパートナーシップへ
第2章 中世ヨーロッパにおける妻たち(1100年〜1500年) … 65
法的、宗教的考察 / エロイーズとアベヲールの物語 / ロマンティックな恋愛の誕生 / 
母親たちとその他の労働者たち / グリゼルダとバースの女房 / 
マージェリー・ケンプの物語 / クリスティーヌ・ド・ピザン / 
イタリア式嫁資 / ルサンナとジョバンニの物語
第3章 ドイツ、イングランド、米国におけるプロテスタントの妻たち(1500年から1700年) … 127
ルターのドイツにおける結婚 / チューダー朝スチュアート朝イングランドにおける結婚 / 
清教徒の荷物
第4章 米国とフランスにおける共和主義の妻たち … 187
植民地時代の米国における完全無欠な妻 / アビゲイル・アダムズ、愛国派の妻 / 
友愛結婚、アメリカ革命の遭う / 共和主義者と王制主義者 ― フランスからの展望 / 
新たな偶像 − 共和国の母と教育者としての母
第5章 ヴィクトリア朝時代の大西洋両岸の妻たち … 223
グレートブリテンにおける恋愛、結婚、金 / 英米の婚姻法 / 米国における妻の地位 / 
エリザベス・ケイディ・スタントン − 妻、母親、活動家 / 南部の妻たち
第6章 ヴィクトリア朝時代の米国の開拓最前線の妻たち … 285
いざオレゴンへ / 西部のロマンス / 南西部の結婚生活 / モルモン教徒の複婚 / 
守られた数世代
第7章 女性問題と新しい女性 … 331
英国の新しい女性 / 結婚の失敗 / 幸せな結婚 / 英国と大陸とのさらなる論戦 / 
米国における「女性問題」
第8章 米国におけるセックス、避妊、妊娠中絶(1840年〜1940年) … 360
イデオロギーと経験 / 避妊 / 妊娠中絶 / マーガレット・サンガーと産児制限運動 / 
新たなセクシャリティー / 避妊と堕胎 − 大恐慌時代
第9章 妻たち、戦争、労働(1940年から1950年) … 397
造船所の妻たち / 国防関連労働者としての南部の女性たち / 
陸軍婦人部隊(WAC)と海軍婦人予備部隊(WAVES) / 
「戦争が終わるまで」 / 銃後の守りと家事 / ボランティア精神 / 戦後の妻たち
第10章 新しい妻へ(1950年〜2000年) … 441
性革命 − キンゼー報告からコスモ・リポートへ / 
仕事革命 − 共稼ぎ(デュアル・アーナー・カップル)の台頭 / 「新しい妻」の暗示
訳者あとがき … 503
註 … 9
索引 … 1

*1:これだけ分厚い本なのに、著者の紹介蘭があまりに簡単すぎるではないか!!!これは訳者、編集者、出版社の怠慢だと思う。