特集 ホームレス


現代思想2006年8月号 特集=ホームレス
【タイトル】  現代思想8月号 2006年、34巻 9号 2006.
【編者】    現代思想編集部   
【出版社】   青土社
【発行年月日】 2006年7月28日
【版型 頁数】 A5版 246頁
【価格】    1300円
【コメント】
ウームとうなってしまう。最初その特集タイトルを見たときに驚き、目次を見て更に驚いた。現代思想というと堅い雑誌、学術雑誌といってよいはずだ。その雑誌の特集が「ホームレス」であるという。その内容は行政当局や研究者の調査・研究による現状の問題点とその対策というだけではない。当事者本人達が語り、論じるのである。確かにこれは思想であろう。そこには諦め・抵抗・自立・非依存・連帯などという様々な想いが詰まっている。なんと『露宿』という文芸誌まで刊行されており、読み・書き・語るという活動をしているのである。うーん、なるほどそうだったのか…・・・。
ホームレスという語が使われだしたのはこの10年ほどのことだろう。それまでは“路上生活者”などという語が専らメディアで使われていた。日常の話し言葉では少し意味が違うかもしれないが、“乞食”という語が使われることが多い。しかしこの語は差別用語に指定されているらしく、活字・映像メディアでは用いられなくなった。そもそも乞食に所属する人たちがほとんどいなくなったので死語といっても良いのだろうが…。
『ホームレスは乞食ではないぞ』と怒られるかもしれない。同じ路上生活者でも乞食は物乞いをするが、ホームレスは働き、現金収入を得、自分の収入で“自立”して生活しているのだと。なるほどなぁー、そうなのか、へぇー。となにやら感嘆詞ばかりの文章になってしまう。
抵抗、連帯というキーワードはかつてのヒッピームーブメントを連想させる。たぶん若い世代に多いのではないかと思うが、当局の政治、世間の常識に対するプロテストメッセージとしてのホームレスということだろうか?それにしてもこういう形で自らの人生哲学・思想を実践しようとするのは私には正直理解しかねる。おそらく他人には分からない深い事情があるに違いないのだろうが・・・。
ウーン、実際この特集は考えさせられることが多い。読者にこれだけインパクトを与えたのだから、とても良い企画だったといえる。ただ私には簡単にはコメント出来そうも無い。もっと問題点を知らなければいけないと思っている。読者の皆さんも本書を読んで何か思うところがあればコメントください。
【目次】
■連載――家族・性・市場 第11回
  撤退そして基本所得という案 / 立岩真也
■特集=ホームレス  
【心情】
○地球にねてる 自句自解 / 橘安純
○夜空の星を見て / 橘安純+酒井隆史(=聞き手)
【討議】
○ホームレスへの招待 / 中桐康介+高沢幸男+小川てつオ
【自立】
○ホームレス、または世界の喪失 / 笹沼弘志
○「ホームレス支援」策における選別と排除、そして抵抗 / 北川由紀彦+戸叶敏大
野宿生活者は隠蔽されていたホームレス状況を都市空間で解放した? / 水内俊雄
○「それにもかかわらず抵抗」宣言 / M・ベナサヤグ (稲葉奈々子=訳)
【生活】
○ホームレスに歴史あり 代々木公園テント村の歴史 / 力道さん+山形さん+小川てつオ(=聞き手)
○ホームレス文化を考える / 小川てつオ
【連帯】
○「反権力のリゾーム」としての「『持たざる者』の国際連帯行動」の模索 / なすび
○「持たざる者」からの脱出 そして何処へ / 稲葉奈々子
【女性ホームレス】
○ドキドキ★野宿生活 / いちむらみさこ
○自由でもなく強制でもなく / 丸山里美
【表現】
○路上生活者が読み、書き、表現すること 文芸誌「露宿」の五年 / 笠井和明
○ホームレスと表現。自立・自律の試み 新世界での取り組み / 上田假奈代
【未来】
ダンボールでみる夢 / 入江公康
○スラムの惑星 都市への内訌と非正規なプロレタリアート / M・デイヴィス (長原豊=訳)
■研究手帖――記号のマテリアル / 近藤和敬