恐竜ホネホネ学  


恐竜ホネホネ学 (NHKブックス)
【タイトル】  恐竜ホネホネ学   はてな年間100冊読書クラブ−No.050  
【著者】    大塚則久
【出版社】   NHKブックス(1061)
【発行年月日】 2006年6月30日
【版型 頁数】 四六版 261頁
【版 刷】   初版1刷
【ISBN】    4140910615
【価格】    1020円
【コメント】
恐竜という生物に対して、誰もが魅力を感じるのではないかと思う。大昔に栄え、忽然と絶滅してしまったが、大きく、強く、堂々としており、かつての地球上に君臨した“王者”であるからだろう。その恐竜の化石から骨格を復元し、体全体を復元し、そして行動や生態など恐竜の生活史を復元するための基礎的学問が骨学である。本書はその恐竜の骨学の入門書である。
恐竜の復元でよく言われるのが、かつては地を這うように前かがみの低い姿勢に組み立てられた恐竜骨格がその後の研究成果によって修正され、より行動的な2本足に、また尻尾も水平に近い位置に代えられた。その結果生き生きとした恐竜の生活史が導き出されたという。確かに昔の骨格標本の写真と現代の修正版を比較すると、その行動性というか活発な動きができるような格好が素人目にも分かる。
第一章、 二章でホネホネ学の概論が説明された後、第三章では骨がたどってきた道と題して、最初の脊椎動物である魚類の登場により生じた“骨”が両生類、爬虫類に至るまでにどのように変化してきたか、全く予期せぬほど意外な骨が形を変えて恐竜の骨格に組み込まれていることが説明される。第四章では古生物学の方法論についてふれ、第五章以下が実際の骨からの恐竜復元作業の説明である。
しかし1本の骨から随分とたくさんの情報が得られ、その考察により具体的な恐竜の性質が導き出されるという道筋はなかなかに刺激的であり、素人ながらなるほどと納得させられる。確かに生物の体の基本を形成する“骨”であるが故に、その変遷は歴史的経過、即ち進化の道筋を語る道具としても大変に有用な材料であると思う。
これらの成果は、骨の観察、計測、現生動物との比較など地道なデータを累々と集積してきた“経験科学”の結果だと思われるが、最近はコンピュータを用いた変異の数値化や種間の類縁関係の考察、その数値から系統樹を作り、進化を論じるなど“理論化”も進んでいる。そう物理学や化学と同じく、現代生物学もまた『理論生物学』という分野を展開しつつあるのだ。その理論の基礎としての骨学ともいえるかも知れない。
本書で紹介されている考え方、方法論は恐竜に限らず全化石、全生物群について有効なものであり、そういう意味では古生物学の考え方、方法論のエッセンスをまとめた本であるといえようか?なお著者は東京大学大学院医学系研究科生体構造学分野助手、哺乳類の古脊椎動物学、骨の比較解剖学、機能形態学専攻、著書多数。
本書は私にとって、生物学という学問の1分野というだけでなく、『恐竜夢物語』の案内書と位置付けることができる。そう、恐竜が活躍・繁栄した中生代への空想を膨らませるいい材料と言えよう。
【目次】
まえがき ・・・ 3
第一章 恐竜ホネホネ学への招待 ・・・ 11
第二章 恐竜の骨学入門 ・・・ 33
第三章 骨がたどってきた道 ・・・ 77
第四章 古生物の復元法 ・・・ 105
第五章 骨から姿勢を復元する ・・・ 135
第六章 骨から筋や生体を復元する ・・・ 159
第七章 骨から見た運動復元 ・・・ 183
第八章 骨から見た生活復元 ・・・ 200
引用文献 ・・・ 238
あとがき ・・・ 243
本書に登場する恐竜ミニ図鑑 ・・・ 261

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