生態学入門


【タイトル】 生態学入門 ISBN:4807905988
【著者】   日本生態学会
【出版社】  東京化学同人
【刊行年月日】2004年8月26日
【版 刷】  初版 4刷
【版型 頁数】A5版 273頁
【価格】   2,940円
【ISBN】   4807905988

【目次】
日本生態学会50周年記念出版に寄す
まえがき
1. 身近な生物とその環境
2. 多様な生物界
3. 進化から見た生物
4. 生活史の適応進化
5. 生理生態的特性の適応戦略
6. 動物の行動と社会
7. 個体間の相互作用と個体群
8. 生物群集とその分布
9. 生態系の構造と機能
10. 環境保全と応用生物学
付録1. 生態学の歩み
付録2. 生物の分類と系統
参考図書
索引
あとがき


【コメント】
日本生態学会の創立50周年記念出版として、生態学事典・共立出版 ISBN:4320056027た。広範な生態学全体をコンパクトにまとめたバランスの良い教科書である。これから生態学をはじめようという学生や初めて生態学を学ぶ向きには最適と思われる。また『高校生にも読める内容』と謳っているだけあって、数式をできるだけ少なくするなど、読者にわかりやすいように工夫してある。私が購入したのは今年1月、これが第4刷であるが、第1刷発行から1年半ほどの間にこれだけ増刷されたということは、教科書を決定する教官、一般読者の評価が相当に高いものと考えられる。確かに生態学の全体像、構成分野、個々の専門用語を知るには大変にコンパクトで便利である。
私にとって注目というか一番インパクトが強かったことは、実は『まえがき』、『刊行のいきさつ』と『あとがき』である。文部科学省の政策としての高校生物の学習指導要領改訂版では、生態学関連の記述が大幅に減らされるということへの危惧から、日本生態学会がどう考え、どう行動したかについて高く評価したいと思う。環境問題、生物多様性保全などこれから取り組んでいかなければいけない問題に対して、生態学の考え方が果たすべき役割は大変に重要と言える。その生態学への理解を全国民について高めていこうという志は貴重であると思う。その結果がこの本である。270ページほどの標準的なサイズの本に、これほど多くの専門家が結集し、議論し、仕上げられた言わば『生態学の基本エッセンスが濃密に組み込まれた』本なのである。
そういう意味で、私にとってこの『生態学入門』は改めて環境の重要性を再認識すると共に、生物界の面白さ、壮大さを教えてくれた本であると言えよう。最後にこのような立派な本を出版された日本生態学会に対し敬意を表したいと思う。