マラケシュの贋化石 上巻


マラケシュの贋化石〈上〉進化論の回廊をさまよう科学者たち
【タイトル】  マラケシュの贋化石 上巻
【著者】    スティーブン・ジェイ・グールド
【出版社】   早川書房
【発行年月日】 2005年11月20日
【版型 頁数】 四六版 255頁
【版 刷】   初版 1刷
【ISBN】    4152086858
【価格】    2100円

【目次】
まえがき
第一部 古生物学誕生にまつわる逸話 化石の正体と地球の歴史
 1章 マラケシュの贋化石
 2章 山猫の眼光をも出し抜いた自然
 3章 陰門石はいかにして腕足動物になりしか
第二部 創造の現在 三人の偉大なフランス人科学者は革命の時代にいかにして
    自然史学を確立したか
 4章 発明された博物学の文体
 5章 ラヴォアジェの図版は語る
 6章 パリで育つ樹木 ラマルクによる蠕虫の区分と自然の再生
第三部 ダーウィンの世紀と現代 ヴィクトリア朝英国の四大ナチュラリストに学ぶ教訓
 7章 ライエルの知恵の柱

【コメント】
ナチュラルヒストリー誌に連載されたエッセイの単行本化第9弾。上巻では贋化石のついての論考から始まり、フランスの偉大な科学者ラヴォアジェ、ラマルクについての評価、更には英国の四大ナチュラリストへと展開される。マラケシュの贋化石の話は珍妙な話だが、偽物を偽物として売るのだからまあいいかと妙に納得してしまった。またラヴォアジェの図版ではなるほどこの地図は確かに独創的だと思ってしまった。おそらく最初、平面図に地層の断面図を書き加えた時点では、どんな意味合いが見出されるかは予測できていなかったのではないか、それが大きな意味を持っていると理解されるようになるのは少し後になってからだろうと思う。しかしこのようなことは科学研究においてはよくあることであろう。従来からある方法(平面図)に新たに別の方法(断面図)を組み込んで解析する、文字通り『切り口』を変えて考察するということは実際研究者が良くやる方法である。
というわけでこのエッセイ集もあっという間に終わってしまった。下巻も直に取り掛かろう。訳者あとがきによれば、グールドの残りの作品は第10弾のエッセイ集と『進化理論の構造』という専門書だけとなったようだ。気合を入れて読まねばと思う。