ブックカフェものがたり
【タイトル】 ブックカフェものがたり
【著者】 矢部智子ほか
【出版社】 幻戯書房
【発行年月日】 2005年12月15日
【版型 頁数】 四六版 237頁
【版 刷】 初版 2刷
【ISBN】 4901998153
【価格】 1995円
【目次】
はじめに … 0
第一部 ブックカフェ・オーナー、かく語りき … 11
貸本喫茶 ちょうちょぼっこ(大阪 北堀江) … 13
学校で知り合った仲良し四人組、バラバラな個性を束ねた貸本業の魅力
ボヘミアンズ・ギルド(東京 神保町) … 29
老舗古書店の三代目、直筆原稿に魅せられ作品を鑑賞できる古本カフェを開店
ミハス・ピトゥー(京都 東大路) … 45
京都の町家を大改造、好きなものだけを集めた雑貨店兼絵本カフェに
ふるほん結構人 ミルクホール(東京 千駄木) … 61
バイト生活に見切りをつけて一念発起、ネット古本店主が開いた古本カフェ
いとへん(大阪 本庄西) … 75
ライバルは地元商店街。大阪の中の田舎にギャラリーカフェをオープン
カフェ・アパートメント(東京 高円寺) … 91
23歳で友人と起業。高円寺のクリエイターが集う古本・カフェのオーナーに
カフェ・オーディネール(東京 下北沢) … 105
脱サラで独立開業。ブックカフェを皮切りに3つの飲食店を共同経営
文鳥舎(東京 三鷹) … 119
介護と仕事の両立から選んだ共同経営の道。店の場所探しでは七転八倒。
よるのひるね(東京 阿佐ヶ谷) … 135
詩歌専門店を経て独立。昼は出版営業代行業、夜はカフェ店主の兼業生活。
第二部 ブックカフェを始める、ブックカフェを続ける … 149
本屋さんになりたい人のためのブックカフェ開業講座
石川あきこ(カロ・ブックショップ&カフェ) … 151
飲食店としてのブックカフェ、悪戦苦闘の5年間
梶村陽一(A/Zブックス&カフェ) … 187
第三部 ほかにもたくさんある、個性派ブックカフェ … 201
全国ブックカフェ&ブック・ギャラリー・ガイド … 218
おわりに … 234
【コメント】
どこか古ぼけたアンティークな調度品、テーブルと椅子、シックな内装、大小の本棚、そして本。気の利いた雰囲気の喫茶店で珈琲を飲みながらゆったりと読書というのは贅沢なひと時である。本書はそんなブックカフェの店主9人が語る自らの店についての物語である。それぞれの店主に共通しているのは「訪れた人にはゆっくりとしていってほしい」との思いである。そこには飽くなき利潤追求とは程遠い、ささやかな夢というか自分のやりたいことへの想いが感じられる。
写真がいい。モノクロだが本棚に飾られた大小の本、新品・古本各種が絵になっている。こんな店が我が家の近くにあればいいのになと思う。実は2年前まで住んでいたマンションの近くにこんな感じのブックカフェがあった。本自体は付属品で販売はしてなかったが、シックな店の雰囲気にぴったりの文庫本や写真集、古雑誌などが並んでいて、とても気に入っている場所だった。香り高い珈琲と文庫本、煙草の煙(私の場合これは必須)。いいではないか?こんな店があったらぜひ教えてほしいと思う。
その後ろの第二部でブックカフェの開業講座では、実際に店を出す際の要領など実用的なことを教えてくれる。きっとこれを読んで、退職後のプランを練ってみようと思ったオトーさんが相当数いるに違いない。しかしそのあとには、苦しい経営のまさしく「悪戦苦闘」の日々を綴ったオーナーの手記が掲載されている。先ほどのオトーさん達はここでぐぐっと考え込んでしまうに違いない。実際すべてのオーナーの話を読んでみると、経営はかなり厳しいというかぎりぎりのとこるだろうという感じがする。地価の高い都市部では失敗する可能性の方が高いのではないか?あれやこれや想像しながら先のオトーさん達はいろいろと悩むことになるだろう。
最後の第3部にお薦めのブックカフェガイドがついているので、近くに行ったときは是非のぞいてみたいと思う。