ローマ人の物語 第14巻
【タイトル】 ローマ人の物語 第14巻 キリストの勝利
【著者】 塩野七生
【出版社】 新潮社
【発行年月日】 20005年12月30日
【版型 頁数】 A5版 306頁
【版 刷】 初版 1刷
【ISBN】 4103096233
【価格】 2730円
【目次】
読者に
第1部 皇帝コンスタンティウス (在位、紀元三三七年〜三六一年)
邪魔者は殺せ/帝国三分/一人退場/二人目退場/副帝ガルス/賊将マグネンティウス/兄と弟/
副帝の処刑/ユリアヌス、副帝に/コンスタンティウスとキリスト教/ガリアのユリアヌス/
積極戦法/ゲルマン民族/ストラスブールの勝利/ローマでの最後の凱旋式/ガリア再興
第2部 皇帝ユリアヌス (在位、紀元三六一年〜三六三年)
古代のオリエント/ササン朝ペルシア/ユリアヌス、起つ/内戦覚悟/リストラ大作戦/
「背経者」ユリアヌス/対キリスト教宣戦布告/アンティオキア/ペルシア線役/首都クテシフォン/
ティグリス北上/若き死/ユリアヌスの後/講和締結/皇帝ユリアヌスの生と死
第3部 司教アンブロシウス (在位、紀元三七四年〜三九七年)
蛮族出身の皇帝/フン族登場/ハドリアノポリスでの大敗/皇帝テオドシウス/蛮族、移住公認/
新キリスト教路線の復活/「異教」と「異端」/「異端」排斥/「異教」排斥/論戦/キリストの勝利(異教
に対して)/キリスト教、ローマ帝国の国教に/キリストの勝利(皇帝に対して)/東西分割
年表
参考文献
図版出典
【コメント】
年1巻、15年かけて『ローマの歴史』を描く大計画も14巻の出版を終えた。最初期のローマ都市国家建国期、成長期、安定期を経て今、明らかな衰退期を迎えている時期である。この14巻ではキリスト教の進出と帝国との争い、そして支配へと至るプロセスが描かれる。キリストの勝利以後なんと中世後期に至るまでこの基本体制が続くことになる。そして近代に入ってからのナポレオンの登場によってようやくキリスト教会による支配体制が崩れ去るのである。
14年前だったか、朝日新聞の特集で、塩野七生という作家が大ローマ帝国を題材に15年がかりで書くという企画が発表された。当時世界史のことは何にも知らなかった私だが、日本についてもっと知らなければいけないと思い、その方面の本を読み出した頃だった。この記事を見て、世界史関係もちょっとのぞいてみるかというぐらいの軽い気持ちで第1巻を読み始めたら面白くてその日のうちに一気に読み終えたのを記憶している。早く次の巻が読みたいと思いつつ1年1巻が待ち遠しかった。それもとうとうこの年末には最終巻を迎えることになりそうだ。
最初そのタイトルから都市国家ローマからイタリア史に至るお話だと思っていた。要するに世界史について何も知らない、まったくの無知であったのだ。それがである。ローマの歴史はヨーロッパの歴史であり、キリスト教会の歴史でもあり、また『永遠の都ローマ』という表現はそれを意味するのだとわかったのはこの本のおかげである。とにかく無類に面白い。難しい研究書、無味乾燥した教科書の類より遥かに楽しく世界史を知ることができるお薦めの書である。