クジャクのオスはなぜ美しい?

クジャクの雄はなぜ美しい?

【タイトル】  クジャクのオスはなぜ美しい? 増補改訂版
【著者】    長谷川真理子
【出版社】   紀伊國屋書店
【発行年月日】 2005年9月25日
【版型 頁数】 四六版 238頁
【版 刷】   2版 1刷
【ISBN】    4314009942
【価格】    1890円
【目次】
序章 派手な雄と目立たない雌
  雄と雌、そしてジェンダー/確かに雄は美しい/生物の雄と雌から学ぶ
第1章 性差はなぜあるのか?
  同種でも雌雄の外見は非常に違う/角と牙/ダーウィンの観察―雄間競争と
  雌による選り好み/不人気だった「雌による選り好み」/自分と同種の雄を選ぶ/
  長い尾羽は魅力的・クジャクの雌は目玉模様の数で雄を選ぶ?
第2章 同姓間の競争と異性による選り好み
  競争か、選り好みか/ヒキガエルの合唱/精子と卵/潜在的繁殖速度と実効性比/
  競争関係の逆転
第3章 賢い選り好み
  大きすぎも小さすぎもしない相手/大きなごちそうが一番/アジサシの有能な父親
第4章 「美的センス」による選り好み
  オレンジ色の輝き/長い尾の雄を好むソードテール/豪華な「あずまや」/
  飾りの盗み合いと雄の順位/シギの実験の失敗/クジャクの雌は目玉模様の
  数で選ばない?/美しいさえずり声
第5章 選り好みの進化
  選り好みを起こす遺伝子/優良遺伝子仮説/ハンディキャップ・モデル/
  シュモクバエの目と目の幅/寄生虫に対する抵抗性の強さ/鳥の羽の
  色の派手さと寄生虫耐性/派手な雄は免疫が強い?/ランナウェイ・
  プロセス/ランナウェイ・モデルは働くか・派手な雄は食べられる/
  派手な雄は死にやすい/存在しないものに対する好み?/
  ジュウシマツとその祖先
第6章 選り好みをめぐる疑問
  選り好みの個性/雄が「出産する」魚での選り好み/モルモン
  コオロギの雄による雌選び/雄は大きい雌が好き/コバシシギの
  雌間競争・一夫一妻の鳥でも雌は選り好みをする/雄も雌も派手な
  一夫一妻の鳥/DNAで明らかになった、つがい外交尾/なぜつがい
  外交尾があるのか?/左右対称は美しい?
第7章 雌雄の対立と葛藤
  昆虫の雌たちの命がけの交尾/雌の多数回交尾と精子間競争/雌雄の対立
  配偶者防衛/雌雄の対立と種分化
第8章 性淘汰の理論をめぐる論争
  ダーウィンとウォレスの論争/全体主義的な群淘汰の考え/雌は慎ましく従順で
  はなかった/性淘汰の新しい枠組み/性ホルモンの複雑な働き/本書で伝えた
  かったこと
あとがき
参考文献

【コメント】
実は13年前に出た初版は既に読んでいたのだが、この間の研究成果や進歩を盛り込んで改訂したということだったので、再度読みたくなって購入した。
著者は進化生物学の専門家で現在早稲田大学教授。性淘汰などに関する著作・翻訳がある。現在刊行中の『ダーウィン著作集』・文一総合出版や『進化学シリーズ』・岩波書店の編者でもある。
さて著者のいう『選り好み』である。この本を読むまで広く生物界において、雌が雄を選ぶということを知らなかった。そしてクジャクの雄が何でこんなに派手なのかという意味が、実は雌に選ばれて自分の遺伝子をたくさん子孫に残すのだという繁殖戦略なのであるということを知ったわけである。ヒキガエルの鳴き声、あずまやを作る鳥など自然とは良く出来ているなーというのが本音である。
終盤に『選り好み』を起こさせる遺伝子というのが出てくるが、この辺はマユツバであるなと思う。そんな遺伝子はないよという気がする。動物の行動を制御しているのは脳の働きによる。脳の構造、含まれる分子などを規定しているのは遺伝子であるということに異論はないが、まだ脳の分子論がわかっていない以上遺伝子に還元して行動までを考えるのはどうかと思う。動物行動学の本を読むといつもそう思ってしまう。そんな遺伝子があるのかい?と。
  というわけで、半分納得、半分マユツバという印象だった。