生態学と私

生態学と私
私が大学に入学したのが1975年(昭和50年)4月である。そのころ高度成長期が終焉を迎え、低成長期に入りそしてオイルショックで世界全体が大騒ぎしている時代だった。また高度成長のツケとして川崎、四日市、尼崎、水俣など日本各地で公害問題が顕在化した時期でもあった。その結果環境問題が毎日のように報じられ、誰もが解決策を模索していた。
そんな時期だったので当然ながら生態学が大ブームとなっていた。有吉佐和子・『複合汚染』・新潮社、複合汚染 (新潮文庫)が大ベストセラーとなり、レイチェル・カーソン・『沈黙の春』・新潮社、沈黙の春 (新潮文庫)が当時の大学生の必読書とされていた。また大学での研究テーマも環境がらみだと大層な研究費が得られ、当時瀬戸内海の赤潮などの研究を行っていた先生もいろいろな意味で『売れっ子』になっていた。
さてその頃の生態学といえば、エネルギーや物質の循環や植物群の研究が主体で、動物行動学が盛んになり始めた頃だった。まだ分子系統学はなく(遺伝子操作が始まったのが1970年頃から)その当時ではDNAの構造解析が始まったばかりであった。従って生態学全体を見回しても今の生態学会の内容と全然違う構成であった。(注:これは最近になって理解したことで、当時はこんな難しいことは勿論わからず、なんとなく眺めていただけだったのだが…)当時私自身といえば、生態学と近しいところにいたにもかかわらず、人の話を少しばかり聞くだけで、これといって首を突っ込むこともなかった。当時はそれほど面白い学問ではないと思われたからである。
今回生態学を勉強しようと思い立ったのは、生物の歴史、すなわち進化学を理解するにはこの生態学が不可欠と考えたからである。生態学自体が昔に比べ大きく変貌した。遺伝学や分類学などを取り込み、理論化が進んだのだと私は理解している。これまで古生物学などを中心とした読書を進めてきたが、更なる深化を図るため別の分野の本も読まねばならないと思っている。
実はこう考えたのはだいぶ前のことで、読まなければいけない本が相当数溜まっている。買い込んだはいいが、積読だけと言う本がたくさんある。ベゴン・『生態学』・京都大学学術出版会、生態学―個体・個体群・群集の科学ウィルソン・『社会生物学』・新思索社社会生物学、メイナード・スミス・『進化遺伝学』・産業図書、ISBN:4782815131、嶋田正和ほか・『動物生態学』・海游社、動物生態学、フツイマ・『進化生物学』・蒼樹書房などなど。2006年を迎えた新年の誓いとして、進化学の勉強を進めるという大テーマを掲げ、何とか軌道に乗り始めたところである。2月になってこの『はてなダイアリー』を知り、大テーマの1部として読書録を書こうと思い立った。大それたことは出来そうもないが、こつこつと地道に進めていきたいと思う。