世界をよくする現代思想入門

zyugemu2006-04-03


【タイトル】  世界をよくする現代思想入門
【著者】    高田明
【出版社】   ちくま新書
【発行年月日】 2006年1月10日
【版型 頁数】 新書版 265頁
【版 刷】   初版1刷
【ISBN】    ISBN:448006284X
【価格】    817円
【コメント】  
  戦後思想の関係を1から始めるに当たっての手始めの書として購入したが、1冊目の入門書として本書を読んだのは大正解だったと言うのが率直な感想である。
  著者は、現在フェリス女学院大学文学部コミュニケーション学科助教授、「物語の構造分析」ゼミを担当。「知った気でいるあなたのための構造主義方法論入門」、「知った気でいるあなたのためのポストモダン再入門」(ともに夏目書房)という挑発的なタイトルの本を出版している。
  本書は、現代思想と謳ってはいるが、実は(私にとっての)哲学入門と言った方が良い様な内容である。Ⅰ、2章は哲学史に関する紹介で、現代思想が成立するに至った経緯を、主だった議論を紹介しながら説明する。3、4、5章が現代思想の紹介、6章が今後の展開という内容である。付録として解説付きのブックガイド、主だった用語解説も付いており、より詳しく勉強を進めていきたいと考えている初学者には大変に便利で、親切な本である。
  本書は、身近な事例を駆使して思想上の問題点を説明し、またとっつきにくく難解な専門用語を丁寧にわかりやすく解説してくれるので、理解しやすい記述となっているため、初めてこの分野の本をかじる向きにはお薦めである。
  実に25年以上近くもこの手の本とは縁が無かったが、読了後に改めて思って事は『哲学・思想』の本は細かいことまで言葉が難しく、やたらと定義が出てくるなということである。そうしないと議論が進められないではないかと言われそうだが…。おまけに『文学的』な表現、言い回しが多様されるので、よけいにわかりにくい。我々一般人は、会社の書類など書く際、誰にでもわかり易い文章を書きなさい、論理展開を明確にして、余計な修飾語は使わず、言い回しがストレートで回りくどく無いモノをと教えられる。そういう観点からすると思想家や評論家の書く書物はどうもいけないと思っていた。本書のような親切で丁寧な入門書、解説書がどしどし出版されることを切に願っている。

【目次】
はじめに
第1章 現代思想の「目的」 … 013
  行為と目的/学問の目的/哲学とはいったい何をする学問なのか/娯楽としての
  哲学/現代思想の定義/現代思想と哲学の違い/現代思想とはいったい何をする
  学問分野なのか/世界をよくする方法とはどんなものか
第2章 現代思想の土壌 … 037
  科学の目的の検討/基礎付け主義という問題/懐疑論の驚くべき帰納/世界を認識するというこ
  との意味/言語によって世界を認識するということ/言語の機能とは関係に基づく分類である/
  言語ゲーム論の帰納/独我論の否定の意味/世界をよくする方法とはどんなものか
第3章 現代思想の誕生 … 075
  対象と目的は分けられない/構造の発見/騒動関係に基づく構造の抽出/対立関係に基づく構造
  の抽出/言語の機能とは、関係に基づく分類である/構造から制御モデルへ/世界をよくする方
  法とはどんなものか
第4章 現代思想の変遷 … 099
  構造主義の弱点/そもそも良いと悪いとはどういうことか/ポスト構造主義/
  脱構築とは何か/制度の専制から逃れるために/世界をよくする方法とはどういうことか
第5章 現代思想の現在 … 125
  動機のある者たち/袋小路に入った現代思想―ロ−ティのプラグマティズム/
  法制度―デリダ再び/社会学中範囲理論という新しい武器/コミュニケーション
  論−ミクロ社会学としての/経済学−反・構造主義としてのレギュラシオン/心理
  学―ガーヘンの社会構造主義とネラティブ・セラピー/文学・芸術・建築―現在
  進行形としてのポストモダニズム/未完のプロジェクト−ハーバーマス/世界をよ
  くする方法とはどんなものか
第6章 現代思想のこれから … 169
  巨大問題/種を蒔く人々/主体は損なわれているのか?−主体の形而上学/
  分析哲学言語哲学)の形而上学的転向/自我とは言語の機能であるー自我の
  存在論/世界を引き受けるということ/共同性と政治/なぜ身体論なのか/言語を
  生産することの重要性/現代思想脱構築する−ローティ再び/世界をよくする方法とは
  どういうものか
おわりに−言い訳に代えて … 214
付録Ⅰ ブックガイド … 217
付録2 キーワード解説 … 249
索引