他人と深くかかわらずに生きるには


他人と深く関わらずに生きるには (新潮文庫)
【タイトル】  他人と深くかかわらずに生きるには  はてな年間100冊読書クラブ−No.028
【著者】    池田清彦
【出版社】   新潮社(新潮文庫 い−75−2)
【発行年月日】 平成十八年五月一日
【版型 頁数】 文庫版 191頁
【版 刷】   初版1刷
【ISBN】    4101035229
【価格】    380円
【コメント】
最近池田教授が大層元気だ。山梨大学から早稲田大学へ移って暫くおとなしくしていたのか、幾つかのエッセイ集が出ただけだったが、ここのところ例の『構造主義生物学』関係の著作*1に続いて、今月後半には岩波書店から生物哲学的・科学論的な論考の新刊本が出る。*2あちこちでの発言もマスコミに取り上げられたり、遂にはNHK出演まであったりしたようだ。そうそう雑誌・『現在思想』・青土社での特集 ポストゲノムの進化論での対談もあったな・・・・・・。
というわけで元気を取り戻した池田教授の新刊本である。新刊といっても四年前、平成十四年に新潮社から出た単行本の文庫化である。幾つかの雑誌に連載したエッセイをまとめたものらしい。
この人の特徴は①徹底した個人主義、②国家・組織(大学を含む)など権力への抵抗、③社会的通念。一般常識への強い懐疑、④相当にヒネクレた背骨であろうか?この人は所謂“団塊の世代”である。学園紛争時*3に大学生だったようで、どうやらこの学生運動とこのひねくれた性格、反権力・反常識、自我主張の思想が培われたと思われる。
そんなわけで本書に見られる見解は、世間一般とはだいぶかけ離れた主張のように聞こえるかもしれないが、実はこの人の論理は切れ味鋭く、見事な展開を見せるのである。だから感心してしまう。なるほどこういう考え方もあるのかと・・・。画一的な総論ばかりの世の中でこれだけ個人主張の強い見解をキチンとした論理で発表できるのはお見事というほか無いと思っている。
読む人によって評価は極端に違ってくる内容だが、私は大いに賛同するところが多いと感じているが、さて皆さんはどう思われるだろうか?
【目次】
はじめに ・・・ 3 
1 他人と深くかかわらずに生きたい
濃厚なつき合いはなるべくしない ・・・ 19 / 女(男)とどうつきあうか ・・・ 27 / 車もこないのに赤信号で待っている人はバカである ・・・ 38 / 病院にはなるべく行かない … 47 / 心を込めないで働く ・・・ 56 / ボランティアはなるべくしない方がカッコいい ・・・ 65 / 他人を当てにしないで生きる ・・・ 75 / おせっかいはなるべく焼かない ・・・ 84 / 退屈こそ人生最大の楽しみである ・・・ 92 / 自分で生きて野垂れ死のう ・・・ 101 
2 他人と深く関わらずに生きるためのシステム
究極の不況対策 ・・・ 111 / 国家は道具である ・・・ 120 / 構造改革とは何か ・・・ 130 / 文部科学省は必要ない ・・・ 139 / 働きたい人には職を ・・・ 148 / 原則平等と結果平等 ・・・ 158 / 自己決定と情報公開 ・・・ 171 / 個人情報の保護と差別 ・・・ 180
文庫版あとがき ・・・ 189

*1:『科学の剣 哲学の魔法』・北大路書房

*2:いのちはだれのものか? 遺伝子不平等社会

*3:おそらく終盤の下り坂の時期だろう