センセイの書斎  


センセイの書斎―イラストルポ「本」のある仕事場 書斎曼荼羅 1 ―― 本と闘う人々 書斎曼荼羅 2 ―― 本と闘う人々 
【タイトル】  センセイの書斎  はてな年間100冊読書クラブ−No.043    
【著者】    内澤旬子
【出版社】   幻戯書房
【発行年月日】 2006年5月30日
【版型 頁数】 A5版 163頁
【版 刷】   初版1刷
【ISBN】    4901998161
【価格】    2310円
【コメント】
各界で活躍する31人の書斎を独特の三次元的立体イラストで描いた異色の書斎紹介。養老孟司上野千鶴子佐高信南伸坊金田一春彦など個人的に気になる先生方の書斎をのぞいてみたくなって購入した。
著者はイラストルポライター*1講談社の文庫サイズの月刊誌『イン・ポケット』に連載の『書斎曼荼羅 本と闘う人々*2』というシリーズがあったのを思い出した。この三次元的立体イラストはかつて妹尾河童氏が得意としており、その作品がいろいろと出回っていたように思う。妹尾氏の作品に比べ全体的に柔らかな筆遣いであり、丸みのある手書き文字がまた女性的な雰囲気を醸し出している。
登場する先生方は何れも各界の現役で活躍される方々で、中には米原万理、金田一春彦など故人となった先生のインタビューも含まれている。仕事柄膨大な本を必要とする人々であるが、その接し方は様々で、整理されていないと気がすまない人、整理が苦手で全くの雑然とした本の山に埋もれた書斎の人など随分と違いがある。ただ共通しているのは読書を軽視している人は無く、皆読書の重要性は認識しており、大切に思っていることである。世の中では情報源の多様化・高速化・効率化・集積化が進み、相対的に『本』の地位が低下している様に思われがちだし、事実読書など時代に合わない、情報化社会にあっては・・・という読書否定派も多数いる。近い将来紙の本などは無くなるなどという乱暴な予想をする輩もいる。だが決してそうではなく、基本的な知識・考え方を学ぶには適切な本から学ぶのが最も効率的であることに変わりは無い。そういった基本スタンスを堅持している人たちがいることは私にとっても心強い。
個人的には佐高信の書斎(事務所)の雑然とした紙の山、書類と本に埋もれた部屋には何と言うか極めて近親感を持つ。あまりに整いすぎている部屋というのは返って居心地が悪そうだし、ほんとにここで仕事してるの?と言いたくなる。しかしこれでは必要な書類や本がなかなか出てこないではないか?見つからないことも多いに違いない。そんなときはどうするんだいと勝手にこちらが心配してしまう。
こういった企画は面白いし、もっと多くの人々の書斎を紹介してほしいものである。
【目次】
はじめに
林望 / 荻野アンナ / 静嘉堂文庫 / 南伸坊 / 辛淑玉 / 森まゆみ / 小嵐九八郎 / 柳瀬尚紀 / 養老孟司 / 逢坂剛 / 米原万理 / 深町真理子 / 津野海太郎 / 石井桃子 / 佐高信 / 金田一春彦 / 八ヶ岳大泉図書館 / 小沢信芳 / 品田雄吉 / 千野栄一 / 西江雅之 / 清水徹 / 石山修武 / 熊倉功夫 / 上野千鶴子 / 紛川哲夫 / 小林康夫 / 書肆アクセス / 月の輪書林 / 杉浦康平 / 曽根博義
おわりに

*1:イラストレーターとルポライターを足し合わせた造語か?

*2:後に単行本2冊として東京創元社より刊行された。最上段の画像参照。