20世紀・大東亜共栄圏


20世紀 大東亜共栄圏 (中公文庫)
【タイトル】  20世紀・大東亜共栄圏   はてな年間100冊読書クラブ−No.065
【編著者】   読売新聞20世紀取材班    
【出版社】   中央公論新社(中公文庫BIBLIO S17-4)
【発行年月日】 2001年9月15日
【版型 頁数】 文庫版 245頁
【版 刷】   初版1刷
【ISBN】    4122038952
【価格】    680円
【コメント】
本巻は20世紀シリーズの第4巻、大日本帝国の成長を受けて、海外への展開を始めた日本の“植民地”運営の軌跡について。大東亜とはどうも時代掛かった言葉の響きがあるが、漢字の意味から分かるとおり、“大いなる東アジア”を意味する。当初は日本本土の他に、中国東北部満州国、朝鮮、台湾を含む地域を指していたが、その内どんどん拡大していき、現インドネシアのジャワ・スマトラ、フィリピンのミンダナオ、太平洋上のミクロネシア諸島であるグアム・サイパンなどもこの範疇に入るようになった。このあたり石原莞爾の『最終戦争論』にあるような東アジアの大連合が米国圏と最終戦争を争うという考え方の基に構想された“経済圏”であろうか?植民地政策の理論化というか理由付けというか、国民を納得させるためのシナリオともいえる考え方であったようだ。
しかし、その構想もそう簡単には実現し難く、現場は相当に地元民の抵抗にあったし、支配者側の采配ミス、誤算などいろいろあって、かなり統制の取れない“共栄圏”となった。共栄圏といっても結局日本の植民地支配なのであるが・・・・・・。特に満洲における関東軍の暴走や中国での抗日運動による抵抗、大本営の迷走などマイナス要因、政府の読み違えが大きく、後の総力戦において脆くも崩れ去ってしまった。
第3章では戦争ものの書物には珍しく、その当時の女性をテーマにした論考が組み入れられている。このあたりは多分、新聞連載開始時の構想には無かったが、例の従軍慰安婦問題が韓国で起きたことが原因となって急遽組み入れられたという感じがするが・・・・・・。
本書は第二次世界大戦前夜の日本の動きをトピックス的に解説した小論の集まりである。学者の書いた論文ではなく、新聞の連載が基になっているので、相変わらず読みやすい文体・用語であり、テンポよく読み進むことができる。
さて次の第5巻では、いよいよ太平洋戦争に突入することになる。20世紀前半のクライマックスとでも言えようか?では次の機会にコメントしたいと思う。
【目次】
1 戦時体制
日本の誤算 名ばかりの民族協和 ・・・ 10 / 大東亜共栄圏 理念から回り日本の大義 ・・・ 17 / 
朝鮮統治 「内鮮一体」掲げ皇民化 ・・・ 52 / 台湾統治 “ご都合主義”の同化政策 ・・・ 66 / 
海外神社 異民族支配に深く関与 ・・・ 74 / 映画の中の日本軍 カンボジアの場合 ・・・ 81 / 
軍神の誕生 戦意高揚の“英雄” ・・・ 90 / 政党政治の崩壊 腐敗・失政に不満 ・・・ 97 / 
混合民族論 植民地政策の道具に ・・・ 104 / 陸軍幼年学校 俊英誤らせた特権意識 ・・・ 108 / 
戦争報道 強制と迎合で“宣伝役”に ・・・ 112 / 国民生活 官民挙げ「総力戦」に ・・・ 119 /
逆流移民 父の国で“母国”と敵対 ・・・ 130 / 革新官僚の光と影 ・・・ 134 / 
統制化 官僚の強大権限 ・・・ 141
2 大戦前夜
日米衝突 中国めぐり覇権争い ・・・ 152 / 軍縮会議 「対米七割」海軍の執念 ・・・ 159 / 
米中接近 日本を警戒 連携を深める ・・・ 166 / 海軍と開戦 中堅将校強硬な主戦論 ・・・ 173 / 
三国同盟 ソ連加えた連合構想も ・・・ 180 / 開戦決定 軍の官僚化 迷走に拍車 ・・・ 184
3 戦争と女性
海を渡った女たち ・・・ 190 / 戦争と性暴力 遅すぎた裁き ・・・ 215 / 
女性解放運動家 アダムズの軌跡 ・・・ 222 / 加藤シヅエの体験した激動の百年 … 232
参考文献 ・・・ 241
執筆者・掲載日一覧 ・・・ 244

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