天皇と東大 上巻


天皇と東大 大日本帝国の生と死 上
【タイトル】  天皇と東大 大日本帝国の生と死 上巻
【著者】    立花隆
【出版社】   文藝春秋
【発行年月日】 2005年12月10日
【版型 頁数】 四六版 762頁
【版 刷】   初版 3刷
【ISBN】    4163674403
【価格】    2800円

【目次】
はしがき
第一章    東大は勝海舟が作った
第二章    明治四年、東大医学部は学生の八割を退学させた
第三章    初代学長・加藤弘之の変節
第四章    『国体新論』と「天皇機関説
第五章    慶応は東大より偉かった
第六章    早大の自立精神、東大の点数主義
第七章    元落第生・北里柴三郎博士の抵抗
第八章    「不敬事件」内村鑑三を脅した一高生
第九章    東大国史科の「児島高徳抹殺論」
第十章    天皇「神格化」への道
第十一章   日露開戦を煽った七博士
第十二章   戸水寛人教授の「日露戦争継続論」
第十三章   戸水事件と美濃部達吉
第十四章   元白虎隊総長・山川健次郎の奔走
第十五章   山川健次郎と超能力者・千里眼事件
第十六章   沢柳・京大総長の七教授首切り事件
第十七章   東大経済は一橋にかなわない
第十八章   大逆事件と森戸辰男
第十九章   大正デモクラシーの旗手・吉野作造
第二十章   右翼イデオローグ”上杉慎吉教授と大物元老
第二十一章  元老・山県有朋の学者亡国論
第二十二章  血盟団事件に参加した帝大生
第二十三章  東大新右翼ホープ岸信介
第二十四章  新人会きっての武闘派・田中清玄
第二十五章  三・十五共産党大検挙の波紋
第二十六章  河上肇はなぜ京大を去ったか
第二十七章  河上肇とスパイM
第二十八章  血盟団安岡正篤
第二十九章  昭和維新の最先端にいた帝大生・四元義隆
第三十章   国家改造運動のカリスマ・井上日召
第三十一章  血盟団事件、幻の“紀元節テロ計画”
第三十二章  共産党「赤化運動」激化と「一人一殺」
第三十三章  血盟団を匿った二人の大物思想家
第三十四章  権藤成卿血盟団グループの壊滅
第三十五章  日本中を右傾化させた五・十五事件と神兵隊事件
下巻目次

【コメント】
文藝春秋に連載されたノンフィクションの単行本化、上下巻で1500頁以上ある大作。本屋で平積みされているのを見て購入した。著者は農協,共産党田中角栄脳死などに関する著書があるノンフィクション作家。(実はこの人、あまり好きではないのだが….)
本書は明治以来の近現代史の中で、東京大学及びここに属する学者(教官)達のかかわった事件を題材にしたノンフィクションである。それぞれの事件は地域的で小スケールなものなどでは無く,それこそ日本の歴史にかかわる大事件ばかりである。それだけに一大学の歴史記述としては異例の書物と言えよう。


長い。実に長い。ほんとに長い・・・・・・。


しかしまあなんだなー、東大というところは明治政府が官僚養成用に作っただけあって、政治と密着しているためか、大事件の舞台としても大層なことだと言うのが正直な感想である。いやはや大学の中がこれほど大事件だらけというのも東大ならではだなーと思う。これだけ事件があると学内は大騒ぎの連続で,とても学問研究,教育などといっておれないのではないか?まあ今の世の中が泰平なので当時の社会や政治が無闇と不安定に見えるのかもしれないが・・・。この本では大学についての読み物としては面白く読めるが、教育・研究機関としての大学を考えるとやはり異様な組織であったのだと思う。これで政府の後ろ盾が無くなる独立行政法人になれるのかしらと単純に思ってしまうがどうだろう?