著作から見たジェームズ・D・ワトソン


著作から見たジェームズ・D.ワトソン―人間性と名著誕生秘話
【タイトル】  著作から見たジェームズ・D・ワトソン
【著者】    エロール・C・フリーデルバーグ
【出版社】   丸善
【発行年月日】 2005年7月25日
【版型 頁数】 A5版 205頁
【版 刷】   初版 1刷
【ISBN】    462107606X
【価格】    2100円

【目次】
序章 
 1 執筆人生
自伝
 2 二重らせん
 3 遺伝子、女達、ガモフ
論評
 4 DNA物語、所長報告、その他のエッセイ
 5 :生命の秘密
教科書
 6 遺伝子の分子生物学
 7 組換えDNA
 8 細胞の分子生物学
コーダ(フィナーレ)
著書目録
索引
図訳注
【コメント】
著者はテキサス大学サウスウェスタン医学センター名誉部長でガン研究の専門家。
本書の主題になっているJ.D.ワトソンは改めて説明するまでもなく、若くして分子生物学の創生期よりこの分野に参加し、例の『二重らせん』以後は研究行政を中心に活躍してきた人である。ハーバード大学教授、コールドスプリングハーバー研究所長を長らく務め、先の『ヒトゲノム多様性計画』の発案、推進の中心人物であった。出版にも積極的で、『遺伝子の分子生物学』、『細胞の分子生物学』、『組換えDNA』などの名著を世に送っている。
本書は遺伝物質DNAの構造解析以後一貫して遺伝子から見た生物学、ガンの生物学などの研究の最前線で活躍してきたJ.D.ワトソンの伝記である。本書のユニークさは表題にあるとおり、その著作遍歴から見たJ.D.ワトソンの研究活動を総括し、人となりを記述するというスタイルであろう。このような伝記の書き方は他には無かったのではないかと思う。
この分野にいくらかの関心があり、学生時代より注目してきた一人としては随分と感慨の深い本となった。本書に登場する本たち、『二重らせん』、『遺伝子の分子生物学』、『細胞の分子生物学』、『組換えDNA』はいずれも私が夢中になって読んだ本である。またフランシス・クリック、ローレンス・ブラッグ、マックス・デルブリック、ロザリンド・フランクリン、マックス・ペルツ、モーリス・ウィルキンス、ポール・バーグなどの登場人物も懐かしく、DNAをめぐる物語とかつての私の生活がいくらかダブって思い出されることになった。
そんなこんなで、読後に随分と感傷的になってしまった。いまではこの世界とは全然関係の無い生活をしている私としては、懐かしさもありまた羨ましくもあるという複雑な心境になっている。まあこんな読書もいいではないかと思っている。