絶滅古生物学
【タイトル】 絶滅古生物学
【著者】 平野弘道
【出版社】 岩波書店
【発行年月日】 2006年2月24日
【版型 頁数】 A5版 255頁
【版 刷】 初版 1刷
【ISBN】 4000062735
【価格】 3990円
【目次】
はじめに
A 地質年代表
B 地質年代区分
代というユニット/紀というユニット/紀よりも下位カテゴリーのユニット/
化石帯というユニット
C 分類群について
D 安定同位対比からわかること
第Ⅰ部 絶滅とは
1 絶滅の定義
2 顕生累代の絶滅事変
種の総数/現在の絶滅/絶滅の種類
3 絶滅の認識とその歴史
4 大量絶滅とその原因論
検証可能な原因論の登場/海退と絶滅の因果関係/確率論的思考の導入/
隕石衝突仮説の提唱/気温低下説の登場/海洋無酸素事変
5 進化論における絶滅
第Ⅱ部 大量絶滅
0 顕生累代の生物の誕生
0.1 Ediacara化石群の大量絶滅
生物群と環境/絶滅の様子
0.2 カンブリア紀の生物の爆発的進化
1 オルドビス紀末の絶滅
1.1 生物界と環境
1.2 どのような絶滅であったか
筆石の突然の絶滅/コノドントの生息域別絶滅/三葉虫の生態別絶滅/
腕足動物の絶滅
1.3 原因は何か
気温低下説/海水準低下説/海洋無酸素説
2 デボン紀末の絶滅
2.1 生物界と環境
2.2 どのような絶滅であったか
絶滅の規模と期間/絶滅した動物たち
2.3 原因は何か
気温・水温の低下か/海水準の変動か,それとも地球外物体の衝突か
3 ペルム紀の絶滅
3.1 生物界と環境
3.2 どのような絶滅であったか
絶滅の規模/紡錘虫の絶滅/海綿動物の絶滅/サンゴの絶滅/
国際対比の問題/中国で見られる大量絶滅
3.3 原因は何か
超新星爆発説/地球寒冷化説/玄武岩噴出説/海洋無酸素説/
中国で得られた事実/3つのシナリオ
4 三畳紀末の絶滅
4.1 生物界と環境
4.2 どのような絶滅であったか
海生生物の絶滅/微古生物の絶滅/陸生生物の絶滅
4.3 原因は何か
海水準低下/乾燥気候と四脚動物の絶滅
5 白亜紀末の絶滅
5.1 生物界と環境
白亜紀前期の気候/白亜紀後期の気候/大陸の分裂と玄武岩活動/
海水準の上昇/スーパー・ブルーム仮説/白亜紀の生物
5.2 どのような絶滅であったか
恐竜の絶滅/哺乳類の絶滅/海生脊椎動物の絶滅/海生無脊椎動物の絶滅/
海生微化石の絶滅/底性有孔虫の絶滅/石灰質ナノプランクトンの絶滅/
植物の絶滅
5.3 原因は何か 隕石衝突仮説の登場
5.4 原因か何か まだ何かある
海退原因説/気候変動説/海洋無酸素事変と中規模絶滅
第Ⅲ部 絶滅進化
1 隕石衝突仮説の波及効果
周期性の妥当性/イリジウムの起源
2 絶滅とは確率的事象なのか
3 原因説の検証
4 大量絶滅がなかったならば
5 進化論における絶滅
6 絶滅古生物学へ
引用文献
索引
【コメント】
著者は早稲田大学理工学研究科教授、確か前は横浜国立大学教育学部教授だったはず。2001年から2年間日本古生物学会の会長をつとめた。
世界初の『絶滅』に焦点を当てた古生物学の教科書。まず本の最初に地質年代表や地質年代区分などの定義が明示される。古生物学の場合、時間スケールが普段の生活とはかけ離れた桁になるので、我々素人にはこの地質年代、区分が厄介である。すぐに話の前後関係がわからなくなってしまうので、本の最初でこれらの定義と一覧表が明示してあるのは大変に親切でわかりやすい。
第Ⅰ部は『絶滅とは何か?』について整然と研究史、その定義、意味するところなどが説明される。
第Ⅱ部では大量絶滅の例として、オルドビス紀末、デボン紀末、ペルム紀末、三畳紀末、白亜紀末の5つの絶滅について、その時代、絶滅の内容、その原因について、膨大な研究報告を引用しつつ、考えられるところを説明する。このあたりは各紀末についての論考は同一のパターンで構成されているため、章立てはわかりやすく、明快だ。
第Ⅲ部は絶滅と進化に関する論考である。
以上、絶滅を前面に押し出した内容となっており、従来のものと比べて、『切り口を変えた古生物学の教科書』であると言える。現在『古生物の科学、全5巻』でこの分野を学習している私には、一風代わった、しかし新鮮な内容の本であると思った。