日本の古辞書


日本の古辞書―序文・跋文を読む
【タイトル】  日本の古辞書 序文・跋文を読む
【著者】    高橋忠彦ほか
【出版社】   大修館書店
【発行年月日】 2006年1月20日
【版型 頁数】 A6版 154頁
【版 刷】   初版1刷
【ISBN】    4469221775
【価格】    2800円
【コメント】
  私もいい年なのだから、科学モノだけでなく日本の良い伝統・文化に少しは触れないといけないと思っている。別に年齢に関係は無いが、日本史同様に古典文学にも接しなくてはいけないと思う。要するに日本についてもっと知りたいと思うのである。
  実は死ぬまでに絶対読まねばと思い『日本古典文学大系』・岩波書店(全100巻、旧版)を買ってしまっている。結婚してすぐだったが、当時のボーナス1回分を丸々つぎ込んだのである。これには裏話があって、これを注文・購入してすぐ、1ヶ月もしないうちに新版全100巻の出版が発表された。そしてそのあとすぐに、新しい研究成果を盛り込み、編集も新しく、書目も大幅に変更された新版が刊行され始めた。(つい先日完結したそうだ)私としては痛恨の極みであったが仕方が無い、意地でも俺は旧版で通すぞという気持ちでいる。だから古典文学を読めるように古文、漢文、古文書などのテキストをいくつか集め、勉強を進めてきた。(このあたりはまるで受験生のようだ)
  その関係で古い言葉を調べるために古語辞典の類をいくつか持っている。古辞書の復刻版も1つだけだが所持している。(注:古辞書というのは新刊本屋ではほとんど流通していないようで、古書店でも大層な値段がついているため一般人には入手しにくい)本書はそんな日本を代表する古辞書たちの序文(はじめに)・跋文(ばつぶんと読む、あとがきの意)を集めた本である。
  そんな本の何が面白いのかと聞かれると困るのだが、この本の著者らによれば、『序跋には著述の経緯など書誌的、歴史的な研究資料としての価値はもちろんのこと、その作者の言語理論が記載されていることがある』という。この習慣はやはり中国の書物の伝統を受け継いでいるらしい。従って序跋文は、その古辞書の誕生から完成までを概観する資料になり得るのである。このあたりはよく考えればなるほどそうだなと納得できるだろう。現在でも序文にはその本を執筆した意図、経緯、目的などが記される。またあとがきなどには凡例、用例、文法など著者の考える言語理論が記述される場合が多い。これらはその著者の時代の言葉がどんなであったかを知る手がかりになるだろうと思われるのである。
  またこれら古辞書の序文・跋文は漢文で書かれることが多いのだが、その漢文の質によりその辞書の使われ方、使用者像が伺えるらしい。教養の高い層が使用した古辞書では格調高い、雅な名文が記載されているが、より大衆的な層を対象にした古辞書ではそれなりの俗な漢文であるという。
  そんなこんなで面白そうだなと思った次第である。特に日本語の変遷を辞書執筆・編纂の観点から知る教材としてユニークだと思う。私の場合あくまで日本を知るための古文学習であるので細かな研究成果などを知る必要は無いのだが、ちょっとのぞいてみるかぐらいの軽い気持ちでアプローチしようと思っている。
【目次】
新撰字鏡(しんせんじきょう) 序・跋 − 日本最古の漢和辞典
和名類聚抄(わみょうるいじゅうしょう) 序 − 国語辞典の濫觴
口遊(くちずさみ) − 教養のための雑学辞典
童蒙頌韻(どうもうしょういん) 序 − 同韻字から成る四言の頌
色葉字類抄(いろはじるいしょう) 序・跋 − 最古のいろは引き国語辞典
本草色葉抄(ほんぞういろはしょう) 序 − 漢方薬種辞典
聚分韻略(しゅうぶんいんりゃく) 序・跋 − 漢詩作成ハンドブック
瑣玉集(しょうぎょくしゅう) 序 − 析学を応用した漢字入門書
下学集(かがくしゅう) 序 − 意味分類体辞書のベストセラー
撮壌集(さつじょyしゅう) 序 − 中世最大のシソーラス
温故知新書(おんこちしんしょ) 序 − 最古の五十音順の辞典
色葉字訓(いろはじくん) 序 − 名言故事を網羅した辞書