文化と両義性 戦後思想の名著50の第44巻


文化と両義性 (岩波現代文庫)
【タイトル】  文化と両義性
        戦後思想の名著50の第44巻
【著者】    山口昌男
【出版社】   岩波書店(岩波現代文庫 学術16)
【発行年月日】 200年5月16日
【版型 頁数】 文庫版 303頁
【版 刷】   2版3刷
【ISBN】    400600162
【価格】    1155円
【コメント】
  上述の著者による名著、75年刊行の文庫版。この著者は重要だと思うので、廉価な本は一通り買っておこうと思っている。いずれ全集モノが出るだろうが・・・。と思っていたら、筑摩書房から著作集全5巻が出ている。まだ存命なのでこれからも新しい著作が出るだろから慌てることもなく、大部で高価な著作はとりあえず図書館で借りよう。
  要するに1つの物事を見る場合、従来の伝統的な見方から見るか(著者の言う内から)、非伝統的な正反対の側から見るか(同じく外側から)によって、意味合い、結論、評価が全然違ってくるので、そういった見方、考え方が重要だよということを言いたいようだ。両義性とはそういった2方向からの考察により2つの意味があるということであろう。また多義性という語も多用されているが、これは同じく2つの見方だけでなく多面からの見方による複数の意義を意味しているようだ。結局文化・歴史についても伝統一辺倒ではなく新しい価値観による見方が必要ということか?
  と思って巻末の中沢氏による解説を読んだら、著者の立場は全く逆で、伝統への回帰であるという。即ち戦後の歴史学改革に反旗を掲げ、戦前までの旧来の手法、考え方で新しい歴史学、人類学に新風を吹き込むというのが著者の主張であるらしい。70年代、80年代の所謂ニューアカニューアカデミズム)の旗手として売れっ子になったが、勝者になれなかったようで、最近は自ら敗者学と称して研究活動を続けているという。
  はなはだ変わった学者であるが、興味のある説ではある。もっと詳しく知りたいと思う。
【目次】
岩波現代文庫版のためのまえがき
第一章 古風土における「文化」と「自然」 ・・・ 1
第二章 昼の思考と夜の思考 ・・・ 19
 1 双方の神 ・・・ 19 / 2 神話の普遍文法 ・・・ 32
第三章 記号と境界 ・・・ 55
 1 意味の多義性 ・・・ 55 / 2 混沌と秩序の弁証法 ・・・ 71 / 3 彼ら
 − 異人 ・・・ 88
第四章 文化と異和性 ・・・ 103
 1 文化のプラクシス ・・・ 103 / 2 おんなのディスクール ・・・ 116 / 
3 排除の原則 ・・・ 137
第五章 現実の多次元性 − A.シュッツの理論をめぐって − ・・・ 157
 1 学の対象としての生活世界 ・・・ 157 / 2 妥当性(レレヴァンス)
 ・・・ 173 / ムージル(『特性のない男』における多次元現実 ・・・ 193
第六章 象徴的宇宙と周縁的現実 ・・・ 221
 1 世界の統一的把握 ・・・ 221 / 2 周縁的現実としての夢 ・・・ 232 /
 3 社会における「中心」と「周縁」 ・・・ 246 
第七章 詩的言語と周縁的現実 − 両義性の彼方へ − ・・・ 271
解説 中沢新一 ・・・ 295