戦後日本の大衆文化史


戦後日本の大衆文化史―1945‐1980年 (岩波現代文庫)
【タイトル】  戦後日本の大衆文化史
【著者】    鶴見俊輔
【出版社】   岩波書店(岩波現代文庫 学術51)
【発行年月日】 2001年4月16日
【版型 頁数】 文庫版 294頁
【版 刷】   3版3刷
【ISBN】    4006000510
【価格】    1155円
【コメント】
  著者は哲学者、若くして米国に渡り、戦後日本に戻って多岐・多彩に活動する『忙しい人』である。多方面で膨大な著作があり、例の岩崎稔『戦後思想の名著50』・平凡社戦後思想の名著50でもその著作のいくつかが取り上げられている我国を代表する思想家である。
  本書は1985年刊行の単行本、1991年の同時代ライブラリー判に続く出版である。カナダ、マッギル大学で1980年1月から3月にかけて行った講義ノートを元に講義内容を口述筆記したもの。名著「戦時期日本の精神史」・岩波書店戦時期日本の精神史―1931‐1945年 (岩波現代文庫)と同じ講義集の後半部を成す記録である。
  口述なので話し言葉が主体となり流れというか響きというか、テンポがいいので読みやすい。戦後といっても私が生まれる前、高度成長期以前の記述が多いので、私の知らない『日本の大衆文化』がそこにある。多くの『昭和史』を謳った歴史書が、実は政治と戦争に限定した記述・論稿であり、また鶴見の言う“大きな名前”を中心に語られ記憶されるのに対し、本書では人々の生活があり、文化があり、また“小さな名前”、“無名”のものが主役である。昭和を知るためにいくつかの本を読んでいるが、真にこの時代を知り理解するためには、無味乾燥した教科書の類ではなく、長く記憶に残る権威主義的な名著でもなく、こういった本当の主役である庶民・大衆を題材にした書物・論稿が必要なのだと思う。そういった意味でこの著者の書いたものは価値が高いと思われる。これからも機会がある毎に触れていきたいと思う。
【目次】
占領 − 押し付けられたものとしての米国風生活様式 ・・・ 1
占領と正義の感覚について − 30
戦後日本の漫画 ・・・ 66
寄席の芸術 ・・・ 104
共通文化を育てる物語 ・・・ 135
六十年代以後のはやり歌について ・・・ 172
普通の市民と市民運動 ・・・ 202
くらいぶりについて ・・・ 232
旅行案内について ・・・ 264
あとがき
解説 ヘリの思想 鷲田清一 267