吸血コウモリは恩を忘れない


吸血コウモリは恩を忘れない―動物の協力行動から人が学べること
【タイトル】  吸血コウモリは恩を忘れない
【著者】    リー・ガトキン
【出版社】   草思社
【発行年月日】 2004年7月2日
【版型 頁数】 四六版 205頁
【版 刷】   初版1刷
【ISBN】    4794213271
【価格】    1680円
【コメント】
  スティルレイニー・『ドーキンスVSグールド』・ちくま文庫ドーキンス VS グールド (ちくま学芸文庫)の参考文献ほかに多数引用されていたので、この辺を知るのに重要かと思い購入した。
  著者は、米国ルイビル大学生物学准教授、行動生態学専攻で助け合い行動などを研究している。サイエンティフィク・アメリカン誌などで一般向けの啓蒙書を発表している。
  なるほど多くの啓蒙書で引用、推奨される意味が良くわかる本である。本書では、動物社会における個体間の助け合い、所謂利他行動を4つのパターンに分類し、身近な人間の生活に当てはめて解説するので、大変にわかりやすく、全く予備知識が無くても読み進めていける。一見すると自分という個体にとって不利になる利他行動をなぜとるのかという説明がクリアーに整理でき、入門書として最適であると思う。
  本書について不満を一つ。翻訳者の意図がわからないのであるが、訳文に漢字が少ないのである。例えば、第3章のタイトルは全部平仮名である。この文章に漢字を使うと難しすぎてわかりにくくなるということでもないと思う。どうしてだ?なぜ漢字を使わないのか?読者に小学生が多いというわけでもないだろうに・・・。本文中にも漢字にすべき箇所が多くある。すべきというのは大人が普通に読む際に気にならない程度の常識的な範囲でという意味である。校正者、出版社側でも問題にならなかったのだろうか?わからない。内容がとてもよいだけに惜しまれる。
【目次】
はしがき ・・・ 5
序論 動物たちが助けあう四つのやり方 ・・・ 9
 第一の道 ― 親族を助ける / 第二の道 ― 裏切らない相手とだけ協力する /
 第三の道 − 自分のためにチームに参加する / 第四の道 − グループ全域を
避けるための自己犠牲
第1章 家族を助ける理由 … 29
 家族を助けるべきかを判断する計算システム / ずるを取り締まる昆虫警察 / 女王ネズミを 戴くハダカデバネズミ / 弟妹を子守りするマングース / 息子の結婚を妨害し弟妹の世話を させる鳥 / 指針
第2章 貸し借りを忘れず精算する ・・・ 71
 「目には目を」は正しかった? / 二匹で交互に卵を産む雌雄同体の魚 / 相棒に助けを求める ヒヒ / 身づくろいをしあうインパラの作法 / 縄張りに居座るあぶれ者を大目に見る鳥 / 指針
第3章 ひとりでできないことはみんなで ・・・ 115
 過酷な環境はずるを許さない / ライオンはどんなときチームで狩をするか / 協力し合って も得にならない場合は? / ベラの協力作戦、ブリの戦略的行動 / スズメはなぜ食物のあり かを仲間に知らせるか / ときどき「オオカミがきた!」と叫ぶ鳥 / 集団で反撃する鳥や魚 / 指針 / これは協力行動か
第4章 仲間のためには危険もいとわず ・・・ 151
 ずるいやつが多い群れはほろびるか / 偵察するグッピーが群れを救う / ミツバチは「超個 体」といえるか / はじめに協力しあい、最後に殺しあう女王アリ / 指針
結論 ・・・ 191
 どの動物研究を重視すべきか / 落し穴
訳者あとがき ・・・ 204