和食と日本文化 日本料理の社会史


和食と日本文化―日本料理の社会史
【タイトル】  和食と日本文化
【著者】    原田信男
【出版社】   小学館
【発行年月日】 2005年11月20日
【版型 頁数】 A5版 254頁
【版 刷】   初版1刷
【ISBN】    4093876096
【価格】    2100円
【コメント】
  著者は国士舘大学21世紀アジア学部教授、食と文化、料理の歴史などの研究書を多数出版している。
  本書はこの著者の料理史研究の総まとめ、即ち『日本料理の通史』である。実に先史以前より説き起こし、今日にいたるまでの“和食”の成立・展開・変容の歴史をまとめた本である。実際はそれぞれの時代において生活様式や考え方、社会のあり様等が変化するので文化的な側面も変容する。料理に関しても人の生活スタイルに伴い大きく変化してきた。特に古代から中世にいたる時点で今日の料理体系の原型が成立し、全国的に展開を見せてきたのである。このあたりはまるで戦国時代の激動を思わせる『和食体系の大爆発』とでも言えようか?
  ところどころ、本に挿入された絵図がいい。その時代時代をイメージさせる古い絵、歴史的な文書、料理本の見開きなど見ているだけでも面白い。また意外なほど料理の歴史について知らなかったことが多いのに自分でも驚いている。例えば、“和食”という概念は明治になってから発生したこと。幕末以後、鎖国体制が崩れ外国から西洋料理、中国料理が流入してきて初めてそれらの対語として和食の概念が発生したのである。当然ながらそれ以前には和食という概念も言葉も存在しなかった。
  料理の歴史がこんなにもダイナミックだなどとは考えもしなかった。そんなこんなでいろいろ勉強になった本である。やはり政治に関する歴史だけでなく、こういった文化史を交えて“日本”を考えなくてはいけないのだなつくづく思っている。
【目次】
はじめに 「食の大国」日本 ・・・ 2
序章 和食とは何か ・・・ 7
 一 和食とは何か / 二 変化する料理と文化 / 三 和食と日本文化論 / 四 日本の
 地形と気候 / 五 アジア的世界になかで
第一章 日本料理の前史と文化 先史時代の食文化 ・・・ 19
 一 旧石器時代の食生活と文化 / 二 縄文時代の食生活と文化 / 三 弥生時代の食生活と 文化 / 四 古墳時代の食生活と文化 / 五 神話にみる食物の体系 
第二章 古代国家と食事体系 日本料理の源流 ・・・ 37
 一 古代における米文化と天皇 / 二 古代国家の米志向と肉食の排除 / 三 神々への料理 としての神饌 / 四 神饌と仏供の関係 / 五 古代国家における料理体系 / 六 古代
 国家における味覚体系 / 七 膳・椀・箸と個人食器 
第三章 中世料理文化の形成と展開 大饗、精進。本膳そして懐石 ・・・ 63
 一 中世における食生活の特色 / 二 大饗料理の成立と中国文化 / 三 “切る”
 “見せる”“料理”と食事作法 / 四 垸飯に見る公家と武家 / 五 精進料理の成立と
 仏教文化 / 六 庖丁人と調菜人 / 七 本膳料理の成立と武家文化 / 八 庖丁流派と
 料理書の成立 / 九 茶の湯と懐石料理の成立
第四章 近世における料理文化の爛熟 自由な料理と庶民の楽しみ ・・・ 99
 一 近世における食生活の特色 / 二 寛永期の料理文化と「料理物語」 / 三 茶の湯
 懐石料理の浸透 / 四 元禄期の料理文化と新興町人 / 五 享保期の料理文化と美意識 / 六 料理書の流れと料理論 / 七 宝暦〜天命期の料理文化と料理本 / 八 化政期の
 料理文化と会席料理 / 九 異国料理の影響
第五章 明治の開化と西洋料理 ・西洋料理の需要と変容 ・・・ 143
 一 西洋料理との出会い / 二 肉食解禁と西洋料理 / 三 西洋料理店の開業と普及 /  四 肉食の展開とその料理法 / 五  西洋料理本と折衷料理 / 六 折衷料理と
 学校教育 / 七 大石禄亭と村井弦斎の料理観 / 八 底流としての日本料理 
第六章 大正・昭和の市民社会と和食 日本料理の変容と展開 ・・・ 181
 一 市民社会の成立と三大洋食 / 二 中国料理の受容と展開 / 三 朝鮮料理の受容と
 展開 / 四 戦前の日本料理と戦中・戦後の食生活 / 五 高度経済成長期の米食
 魚・肉料理 / 六 料理の多様化と外食・中食 / 七 料理の国際化と海外進出
終章 和食から見た日本文化 ・・・ 217
一 和食から見た北海道 / 二 和食から見た沖縄 / 食と文化の国際性 / 和食と日本文化
コラム 
スシ ・・・ 96
 テンプラ ・・・ 140
 スキヤキ ・・・ 177
おわりに ・・・ 240
参考文献 ・・・ 249
索引 ・・・ 255