戦後史


戦後史 (岩波新書 新赤版 (955))
【タイトル】  戦後史     はてな年間100冊読書クラブ−No.021
【著者】    中村政則
【出版社】   岩波書店岩波新書955)
【発行年月日】 2005年7月20日
【版型 頁数】 新書版 294頁
【版 刷】   初版7刷
【ISBN】    4004309557
【価格】    882円
【コメント】
昭和史に絞った歴史書もこれで5冊目になった。やはり昭和を語るとき、『戦争』と『政治』は避けられないキーワードである。本書は著者のいうTrans-war histry(貫戦史または貫戦争史)に基いた戦後史論である。貫戦史とは戦争前中後を連続体として捉える歴史研究法という意味らしい。以下にその特徴をまとめる。
第1に戦前と戦後を断絶と捉えるのではなく連続として捉えること。日本の戦後史の源流・原型は一九二〇年代に始まり戦時動員体制の中で形成されたのであって、連続性こそ強調されるべきである。第2に「戦前は戦争、戦後は平和」といいうステレオタイプの戦後史像を修正する狙いがある。日本国内の平和だけを見るのではなく、国外を見渡せば朝鮮戦争ベトナム戦争湾岸戦争イラク戦争アメリカの戦争に絶えず日本は関係してきた。そん点を見逃してはいけない。第3に連続か断続かという二者択一ではなく両方をグローバルな視点から捉えることが重要で、戦後改革を近代化、現代化、前近代残存の三層からなら重層的改革と捉える、などである。
著者は一橋大学名誉教授、神奈川大学特任教授、日本近現代史専攻。本書は新書という限られた頁内で戦後のポイントを貫戦史及び「アジアの中の日本」の観点からまとめた好著といえる。
第一章では敗戦・占領の簡潔な説明にはじまり、冷戦、単独講和など外交を絡めたグローバルな視点から日本の再建が語られる。第二章では前記第二の特徴、平和だけでなく実は戦後も戦争と密接な関係があったことが語られる。ベトナム戦争日韓基本条約そして沖縄返還と・・・・・・。第三章では戦後処理が一段落し、高度成長期を終えた後の日本社会の「ゆらぎ」が語られる。オイルショック、中間層(中道勢力の意か?)、バブル経済そして昭和の終焉。第四章が戦後の終焉である。ここでふたたび湾岸戦線などアジアの中の日本が語られ、バブル崩壊、新国家主義の台頭に繋がる。終章では新しい戦争の中でと題してやはりイラク戦争を取り巻く日本の国際的役割、憲法問題など今議論されていろ話題にも触れられている。
どうやら戦後という時代はそれ以前に比べ国際的というか外交的というか、外国との関係がより密接となり、日本の役割がグローバルなレベルで求められるようになった時代であったといえるようだ。敗戦からの国政建て直しと共に外との交わりも否応なしに強化せざるを得なかったというところか。冷戦構造の間で翻弄されたというのが私の印象であるがどうだろう?世界の東端の小国である。国は焼け落ち、資源も無く、はたまた欧米型のリーダーシップに劣り、外交べた、島国根性とあまり世界の檜舞台での活躍が期待できる国民性ではないと思われる。勤勉で実直で従順でお人善しぐらいがとり得かな?こんなことを言うと叱られそうだが・・・。どう考えても日本がここまで来られたのはアメリカの世界戦略の一端でその役目を全うしてきたからに他ならないと思われる。そのアメリカもEUや第三世界の進出により将来が危ういかもしれない。これから果たしてどこへ行こうとしているのだろうか・・・・・・。
【目次】
序章  「戦後史」をどのように描くか ・・・ 1
第一章 「戦後」の成立(一九四五〜一九六〇年) ・・・ 13
第二章 「戦後」の基本的枠組みの定着(一九六〇〜一九七三年) ・・・ 83
第三章 「戦後」の揺らぎ(一九七三〜一九九〇年) ・・・ 145
第四章 「戦後」の終焉(一九九〇〜二〇〇〇年) ・・・ 189

終章  新しい戦争の中で 「戦後」とはなんだったのか ・・・ 251
あとがき ・・・ 291
参考文献
略年表
索引