社会学入門 人間と社会の未来


社会学入門―人間と社会の未来 (岩波新書)    戦後思想の名著50
【タイトル】  社会学入門 人間と社会の未来  はてな年間100冊読書クラブ−No.023
【著者】    見田宗介
【出版社】   岩波書店岩波新書1009)
【発行年月日】 2006年4月20日
【版型 頁数】 新書版 215頁
【版 刷】   初版1刷
【ISBN】    4004310091
【価格】    816円
【コメント】
社会学というものをあまり知らない。これまでにほとんど系統だった知識を持ち合わせてこなかった。その一分野である文化人類学に少しだけふれたことがある程度だった。しかし最近もっと社会のことを知らなければならないと思うようになってきた。そこで手頃な入門書を探していたところ、本書に出会った。
本書は岩波新書リニューアルの第一弾として出版された1冊である。著者は東京大学名誉教授、共立女子大学教授、専攻は現代社会論、比較社会学、文化の社会学、日本の社会学における第1人者の一人。学者には珍しく、学術的な内容の本は本名の見田宗介で、文学的、哲学的な論稿では『真木悠介』という“筆名で”出版している。先に取り上げ、現在格闘中の岩崎稔 編・『戦後思想の名著50』・平凡社にもその著作が上げられている人である。
社会学とは、

社会学は人間の学ですが、それはこのように現代の知において捉えられた人間の学、つまり、関係としての人間の学であるのです。    −004pp.−

社会学で取り扱う主題としては、

現代社会論/自我・主体・アイデンティティー/他者・関係・コミュニケーション/身体と間身体/知と言語/時間と空間/聖なるもの・呪われたもの/文学と芸術/ライフコース/セクシャリティー/ジェンダー/こどもと教育/成熟と老い/病と医療/差別と共生/権力と支配/贈与と市場/都市と都市化/家族/仕事と遊び/デザイン・モード・ファッション/メディアと情報化/日本文化/民族・国家・エスニシティ/環境と生態系/社会構想論・・・・・・。 −006pp−

これだけ見ても対象となる範囲は相当に広い。また学際的な領域、経済学、法学、政治学などの社会科学は言うに及ばず、環境、技術、医学・医療など自然科学分野との連携も必要な分野であるという。よく言われる『越境する知』である。まあ現代の科学においては、それぞれの研究課題が巨大化し、また人間社会のいろいろの局面での関係が複雑化しているため、学問分野間を『越境』する必要があるのは当たり前の話ではあるが・・・・・・。
結局著者の言いたいのは、“現代社会の問題”を論じ、対策を打つには、従来の一専門分野の解析だけでは不十分であり、社会科学、自然科学そして人間の根源としての『哲学』の共同作業による解析・考察が重要だよということであろうと思う。なんかものすごく極端に要約してしまったようだがとどのつまりはこういうことであろう。
しかしこの問題は自然科学の側から見ても同様である。例えば、新技術、将来市場、未来産業及びその基礎としての科学・教育・研究システムなどを考えるとき、哲学と社会科学の存在無しには語れない。そういう意味で『総合科学』的アプローチの重要性が理解されると思う。
どうもこれだけでは当たり前すぎて物足りないというのが実感である。多分、総論的な「現代社会論」の入門書という本書の性格からこの辺が限界なのだろうなと思う。あとは各論をもっと深く、より広くすすめることが必要なのだと感じている。
【目次】
序 越境する知 社会学の門 ・・・ 1
一 鏡の中の現代社会 旅のノートから ・・・ 23
二 <魔のない世界>「近代社会」の比較社会学 ・・・ 49
三 夢の時代と虚構の時代 現代日本の感覚の歴史 ・・・ 69
四 愛の変貌/自我の変容 現代社会の感覚変容 ・・・ 97
五 二千年の黙示録 現代世界の困難と課題 ・・・ 123
六 人間と社会の未来 名づけられない革命 ・・・ 143
補 交響圏とルール圏 〔自由な社会〕の骨格構成 ・・・ 167
参考文献 ・・・ 203
あとがき ・・・ 207