プリオン説はほんとうか? タンパク質病原体説をめぐるミステリー


プリオン説はほんとうか?―タンパク質病原体説をめぐるミステリー (ブルーバックス)
【タイトル】  プリオン説はほんとうか? タンパク質病原体説をめぐるミステリー
        はてな年間100冊読書クラブ−No.024
【著者】    福岡伸一
【出版社】   講談社ブルーバックスB1504)
【発行年月日】 2005年11月20日
【版型 頁数】 新書版 246頁
【版 刷】   初版1刷
【ISBN】    4062575043
【価格】    945円
【コメント】
先に紹介した『プリオン狂牛病』・青土社の原書出版に次ぐ「柳の下」本であろうか?日本人の手による何か新しい研究成果が紹介されるているかと思い購入したが・・・・・・。
この20年ぐらい狂牛病プリオンは深刻な大問題として欧州を悩ましてきた。主食である牛肉と人の病気であるクロイフェルト・ヤコブ病(以下CJD)の関係が明らかになるにつれ、その深刻度を増し、社会問題だけでなく貿易問題、EU内での反目など大層な影響が出ているようだ。
本書はそのプリオン説を解説すると共にその弱点、研究における新たな取り組みなどを紹介している。そういう観点からはまっとうな本である。ただしプリオン説を否定できる決定的な証拠はまだ得られていない。なのに「ほんとうか?」などという否定的なタイトルを掲げて一般受けを狙おうという意図が見え見えなのはいただけない。著者及び編集者の節度がまず気になる。まあ何かの話題の情報源という位置付けなら許せるかなーとも思えるが・・・。
なお著者は青山学院大学理工学部化学・生命工学科教授、分子生物学専攻。この分野での著書、訳書がある。
このブルーバックスは学生時代よりお世話になっている。科学関係の叢書としてはそのテーマの多様さで業界唯一の充実振りである。科学関係ではそれこそ私の関心のある分野を全てカバーしているので、まず初めの1冊として齧ってみるのに適したシリーズといえる。他の新書に比べやや価格が高いのが難点か?
しかし最近のタイトルはどうも“一般受け”を狙いすぎた感がある。本書もタイトルや小見出しなどで奇をてらいすぎだ。あまりに俗っぽい言葉、文章だとなんだか中身まで安っぽく感じられてしまう。学術書なので、もうちょっと超然としたところがほしいと以前から思っていた。このあたり岩波新書中公新書は淡々としかし堅実にという学術書としての路線であり、ブルーバックスと一線を画している。どちらかというと私は岩波、中公の方が好みである。ただし岩波独特の権威主義というか俗に言う「岩波アカデミズム」臭さは大変に鼻持ちならないと思っているが・・・・・・。
私にとって岩波新書中公新書は甲乙付け難い存在だ。現代新書は両者よりやや砕けた感じだが思想、哲学関係でいい本がある。それからハウツーものが多いのかな?前2者にはハウツーものは殆どないと思う。その他には集英社新書平凡社新書ちくま新書がいいかなと思っている。
この10〜15年ぐらいの間に“新書戦争”が勃発つ、随分沢山のシリーズが創刊され、タイトルもものすごい数に達している。読者としては安価で良質の新書が多数出版されるのは結構なことだ。ただし中には玉石混交のシリーズもあり、あまり感心しない編集ポリシーの本もある。名のある出版社のシリーズでもである。だから定評のある叢書でも油断はできない。最後は自分で読んでみて判断するしかないかと思っている。
【目次】
はじめに ・・・ 1 / 第1章 ブルシナーのノーベル賞受賞と狂牛病 ・・・ 15 / 第2章 ブリオン病とは何か ・・・ 33 / 第3章 プリオン説の誕生 ・・・ 59 / 第4章 プリオン説を強力に支持する証拠 ・・・ 87 / 第5章 プリオン説はほんとうか その弱点 ・・・ 113 / 第6章 データの再検討でわかった意外な事実 ・・・ 153 / 第7章 ウィルスの存在を示唆するデータ ・・・ 173 / 第8章 アンチ・プリオン説 レセプター仮説 ・・・ 191 / 第9章 特異的ウィルス核酸を追って 219 / おわりに ・・・ 238 / さくいん ・・・ 246