薬の大阪 道修町 今むかし


薬の大阪道修町―今むかし (上方文庫)
【タイトル】  薬の大阪 道修町 今むかし 
        はてな年間100冊読書クラブ−No.030
【著者】    三島佑一
【出版社】   和泉書院
【発行年月日】 2006年1月25日
【版型 頁数】 四六版 288頁
【版 刷】   初版1刷
【ISBN】    475760341X
【価格】    2625円
【コメント】
大阪は商人の町、古くより“商”の盛んなところである。その大阪の中心街にある道修町*1は「薬問屋」の立ち並ぶ古き良き時代の町並みを残した“風情のある”町であった。あったと過去形で書いたが、実は20数年前、就職活動でこのあたりをだいぶ歩き回ったことがある。勿論大阪の薬屋を訪問するためである。JR大阪駅から南に向かって、広い道路の両側に近代的なビルディングが立ち並ぶ「御堂筋」を少しばかり下り、地下鉄御堂筋線淀屋橋駅近くで、向かって左側*2へ曲がるとそこが道修町である。
武田薬品工業藤沢薬品工業*3塩野義製薬田辺製薬・・・・・・、これらは江戸時代より続く日本を代表する製薬会社である。他にも大中小の薬屋さんが軒を並べ、その古いが趣のある家屋が印象的な町であった。また東京を本拠地にする薬屋もこの町に集まっていた。第一製薬、三共、エーザイ、東京田辺持田製薬・・・・・・。要するに日本中の製薬会社が“拠点”としてこの町に店を構える文字通り「薬の町」なのである。
本書はそんな薬の町の今はむかしのことなどを随筆仕立てで書きとめた本である。古き良き道修町への思いを、この土地に由来の風物詩、旧所名跡、この町の歴史などと絡めて、味わいのある文体で書き綴っている。
著者はこの町で生まれ育った人で、元四天王寺国際仏教大学教授、国文学専攻、「船場大阪を語る会」会長。国文学関係の著作・論文の他に、和歌、小説など多数、また本書の前篇とも言える書物を出版している。
現在、昭和史に焦点を絞った読書を目指しているが、歴史といえばなにも日本全体、東京を中心とした歴史だけを言うのではない。大阪にも勿論歴史があるし、他の地方自治体全てにそれぞれの歴史がある。本書は昭和の前半部分にスポットを当てた“大阪”の歴史でもある。そこには当然ながら東京には無いものがあるに違いない。
そんなことを思いながら読みすすめたが、ノスタルジックな雰囲気を感じさせるいい文体・文章である。さすが国文学の先生だけあって日本語が旨い。当たり前か?私もこんな味わいのある文章が書けるようになれたらいいなと思う。残念ながら文章の達人になるにはまだまだ文書修行が足りないようだ。でもまあ、しょうがないかなと半ばあきらめかけているところもあるのだが・・・・・・。
【目次】
Ⅰ 大阪の中の大阪の町 ・・・ 1
Ⅱ 道修町の十二の特色 ・・・ 11
Ⅲ むかしの船場道修町 ・・・ 125
Ⅳ 戦前の道修町 ・・・ 241
あとがき ・・・ 281

*1:正式名称は『どしょうまち』と発音するが、地元大阪の人たちは“う”の音をはしょって、『どしょまち』と短く発音する

*2:方角で言うと東側

*3:当時、現アステラス薬品