文庫出版目録に見る各社の事情?


去年11月の引越の際に荷物を整理しようと、本棚に並んでいた各種の出版目録の古いものを多数処分した。また新しいのを入手したらよいと考えたからである。新刊中心の読書を心がけているので、内容の古すぎるものはあまり意味が無く、単なるゴミを沢山抱えていても無駄だと思ったのである。その後少しづつ出版社にメール、葉書で請求したり、本屋のカウンターに積み上げてあるものをもらったりしてだいぶ集まってきている。今回はこの出版目録に目を通して思ったことを書きたい。
まず真っ先に思ったことは、文庫の充実である。小学館、PHPなど最近参入した出版社は別にして、古くから文庫を扱う出版社の文庫目録が5〜10年前に比べて、相当に厚くなっているのに気が付いた。これは各社在庫点数が大幅に増えていることを意味しているのだと思う。角川、新潮、早川、講談社学術、河出、岩波、集英社、ちくま、中公、文春など主要な文庫メーカーの目録が目に見えて厚くなっている。競争が激しく、各社出版点数が増えているのと、できるだけ多品種を在庫しようという各社の意図が見て取れる。
また文庫の多様化も関係してしるのかもしれない。角川、講談社、早川、集英社などが複数のレーベルというのかジャンル分けした文庫群を出している。また『ライトノベルズ』というジャンルというかマーケットがあるのを知らなかった。どうやら中高生など若年層をターゲットにした小説類を指す*1のかと思っているのだが、実際中身がどんなものなのか読んだ事が無いので分からない。角川、講談社集英社などがこの分野のレーベルを持ち目録にも掲載している。こういったものは以前は文庫目録には入っていなかったようだ。*2
また漫画文庫を掲載しているものが多数ある。中公、ちくま、小学館等々・・・。これらも以前は出版点数自体が少なかったのであまり目立たなかった分野だ。
新潮文庫目録には業界唯一といっていいかも知れないCD、DVDの情報が入っている。同社が得意にしている“朗読”による小説、詩集などの商品である。これはドライブの際のBGM代わりに、車中で“聞く”にはとてもよいと思うので是非購入を検討したい商品群だと思っている。
古典的名著を廉価な版で提供するという文庫本来の存在意義を頑固に貫いているのが岩波、講談社学術である。この両者も文庫目録が厚くなっており、在庫点数を増やしているようである。またこの名著を廉価でのスタイルの文庫で最近注目しているのがちくま文庫である。学芸文庫という名称で沢山の名著、貴重な資料集などを復刊している。最近購入したものでは『婦人家庭百科辞典 上下巻』、『戦中・戦後気侭画帳』、『暗黒日記 全3巻』、『言海』などなど、お見事というほか無い品揃えであり、今後に期待したいシリーズである。何がすごいって、画集や辞典類まで文庫化してしまうのはなかなかできることではない。学術文庫に和英辞典、英和辞典の類が入っている例があるが、画集となると他に例を見ない“快挙”である。他にも資料性の高いものが多数含まれているのでこれからお世話になると思う。
目録とは関係ないが、快挙ついでに、集英社文庫伊藤博・『万葉集釋注 全10巻』には驚いた。突然の企画発表を聞いて、本屋に駆け込みとにかく全巻を購入した。これほどの大型出版はめったに無いことだろうと思う。昨年の私にとっての大ヒット本間違いなしである。
というわけで各種文庫にもそれぞれの個性があり、それぞれに特徴的な品揃えがある。最近また文庫への依存度が増している私としては、今この時期は充実した読書の時期といえるかもしれない。今後も各社益々のご清栄をお祈りする次第である。

*1:間違っていたらごめんなさい!!!

*2:うかつにもごく最近気が付いたのだが、ライトノベルズに限らず文庫小説類の表紙カバーが漫画風になっているものが多いのには正直、閉口している・・・・・・