日本語の歴史


日本語の歴史 (岩波新書)
【タイトル】  日本語の歴史   はてな年間100冊読書クラブ−No.032
【著者】    山口仲実
【出版社】   岩波書店(岩波新書1018)
【発行年月日】 2006年5月19日
【版型 頁数】 新書版 230頁
【版 刷】   初版1刷
【ISBN】    4004310180
【価格】    777円
【コメント】
日本語はどのようにして現在のような形に出来上がってきたのか?本書はこれを歴史的な変遷として捉え、その移り変わりと時代背景などを交えて語る“日本語史”である。奈良時代のやまとことばと漢字の出会いから説き起こし、万葉仮名、漢式和文*1の成立、その文法のポイント解説、文章のこころみ、平安時代に入っての係り結び、江戸時代での話し言葉と書き言葉、明治時代以降の言文一致など、ポイントを押さえた解説で、要領よく分かりやすい。また著者の書く日本語がやさしく、語りかけるような話し言葉調であるため、読者にとって親しみやすい文体であるといえる。
この手の読み物を読んだ事が無かったのでホントにいい本だと思う。著者によれば、こういう一般向けに日本語の歴史を読み物風仕立てで書いたものがなかったという。古文の文法書としてみても大事なところを押さえてあるので、是非古文をこれから始めようという高校生などにも読ませたい内容である。こういった副読本を読んでから教科書を学んだ方がその面白味が増し、興味を思って意欲的に勉強できるだろうと考えている。
私の場合もそうだが、どうも高校の古文・漢文の授業というのは、その重要性や必要性、学習の意味・意義などが十分に指導されないまま突然に始まり、いやいや聞かされるという経験をした人が多いのではないかと思っている。その結果、例えば理科系に進んだ人は、高校以後にこれらの味わい方・面白味を知らずにいる人が多いようだ。本当は面白い科目なのに・・・・・・。当然ながら日本の歴史や古い文書、古典文学などを理解するにはこれらの基礎が必須である。そこでこれらの学習の意義をよく理解させてから授業を開始すべきであると思う。日本人である限り、“日本や日本語”を理解することは全ての国民に必要なことなのだから・・・。私はたまたま理科系の人であるが、もっと早くにこれらの科目に興味を持ち、日本の古い文章、歴史、古典文学や文化的資産を理解できるようになりたかったと今では思っている。多分同じように思っている人たちは随分多いのではないか?そういう意味で日本の国語教育の在り方を考え直すべきであると思っている。先に漢字とコンピュータというコラムを書いたが、この辺の国語教育に関する考えは別に日を改めて書きたいと思う。
本書の著者は埼玉大学教授、日本語学(日本語史、擬声語研究)専攻、研究論文のほかに日本語に関する著書多数。この4月の岩波新書新赤版のリニューアル後の第2弾になる出版である。この企画の広告を見たときに是非読みたいと思った1冊であったが、期待にたがわぬ良い本であったと思う。
【目次】
日本語がなくなったら ・・・ 1
Ⅰ 漢字にめぐり合う 奈良時代 ・・・ 9
Ⅱ 文章をこころみる 平安時代 ・・・ 43
Ⅲ うつりゆく古代後 鎌倉・室町時代 ・・・ 87
Ⅳ 近代語のいぶき 江戸時代 ・・・ 127
Ⅴ 言文一致を求める 明治時代以後 ・・・ 167
日本語をいつくしむ ・・・ 209
あとがき ・・・ 221
参考文献 ・・・ 223

*1:古代の漢語文を理解するために読み下し法が発明されたが、この古代漢語形式で書かれた日本語文を指して漢式和文という。当然ながら漢語ではなく日本語である。