村上氏逮捕


とうとう村上ファンド代表の村上氏が逮捕された。容疑はインサイダー取引による証券取引法違反らしい。相当にヤバイ仕事だったようで、これではヤクザと変わらない。通産省(当時)の高級官僚から実業界への転進で、ライブドアニッポン放送株買占め時にも取りざたされていたように、“裏業界”では有名人だったようだが、法を犯してはやはりヤクザなヤツということになるのだろう。
さてこういった問題が起き、大株主となった人たちがよく口にする「株主の権利」とはなにかについて少し考えたみたい。株式会社である以上“会社”は株主のものであるはずだ。会社の建物、土地、備品などのものは会社のものであり、結局は株主のものである。但し、社員や役員は株主の“持ち物”ではない。株式会社が契約により雇用関係を結んだ対象ということになる。役員は株主より具体的な経営・運営を任された人達、社員はその役員の指示に従って実務を行う人達ということになる。
ここで問題になるのが、①株主と役員の関係、②買占め*1により大株主になった人に対する感情的な対立である。①関連では今回も阪神電鉄側と相当な軋轢があった模様で、役員派遣を要求する村上ファンド側と嫌がる阪神側という図式で対立が続いていた。特に経営陣に「株主の利益」についての理解が殆ど無く、配当さえしておれば株主への利益についての約束は守っており、経営としては何の問題もないという風な思いがあったようだ。これは日本の経営陣に共通の言い分のようで、よく聞くセリフである。その対応について、村上氏は珍しくマスコミの前で、甲子園球場用地の有効活用や阪神タイガース株の1部売却など、途方も無いといえるような提案をしていたが、どうもお粗末な内容だったと思う。場当たり的というか、思いつきというか、株の値上がりを意図したパフォーマンスだろうと思われる。最初から経営に加わる気など無かったのであろう。その結果②に関連することだが、経営陣に批判され、一般の野次馬にも嫌われる所以であろうと思う。そもそもマスコミの前に現れること自体が奇妙である。わざわざこういうお粗末な経営プランを公表する必要も無く、株価の行方を睨んでおれば良かったのだと思っている。
既に昨年の時点で違法行為があったとのことだが、これからの捜査により新たな違法行為が出てくる可能性もあるだろう。
阪神電鉄株については、阪急ホールディングスに用よる公開買付が始まっており、村上ファンドの持ち株もこれに応じるということだ。その結果、阪急グループは阪神グループを傘下に入れ、全国3位の電鉄グループになるそうだ。阪神側も同業への統合になるので、概ね冷静に受け止めているようだが、奥底には何で堅実な経営が出来ているのに・・・という思いは必ずあると思う。要は株式の管理を怠ったがゆえにライバル企業への身売りとなってしまったということだろう。こういう意味で今回の騒ぎは、今後の日本の会社経営におおきなインパクトを与えたと思われる。

*1:極めて日本的な表現であるが、ごく短時間に大量の株を買うことをいう。通常値上がりを誘導し素早く売り抜けることで差益を得ようとする場合と、株主として会社の経営に参加しようとする場合がある。