明治商売往来


明治商売往来 (ちくま学芸文庫)
【タイトル】  明治商売往来
【著者】    仲田定之助
【出版社】   筑摩書房ちくま学芸文庫 ナ-10-1) はてな年間100冊読書クラブーNo.036
【発行年月日】 2003年12月10日
【版型 頁数】 文庫版 382頁
【版 刷】   初版1刷
【ISBN】    4480088059
【価格】    1365円
【コメント】
雑誌『新文明』に昭和41年(1966年)から連載したものを基に、昭和44年(1969年)、青蛙房より単行本化した本の復刻版。著者は東京・日本橋生まれ、美術評論家として活躍した人。
本書は明治期の後半に東京下町で営まれていた商売や仕事を題材にしてまとめた短いエッセイの集りである。当時の商売を描くことは、庶民の生活をも描くことであるといえる。序において、作家永井龍男が指摘するように、本書は“東京風俗史”であり、“東京郷土史”である。当時の東京の様子、庶民生活を知る上での資料として購入した。
目次の小見出しだけを見ると、知っている商売は少なく、「蚊帳問屋」、「下駄屋」、「足袋屋」などがあるぐらいで、知らないが名前から想像できる商売、「竹筒売り」、「号外売り」、「虚無僧」など、どんな商売だか名前からは想像もつかない「おわいや」、「でいでい屋」、「砂絵師」など・・・。なお今でも続いている商売がいくつぐらいなのだろうかと思うが、正確にはわからない。
いやーまいったなというのが本音である。全く不思議な書物だ。夢物語や作り話ではなく、実際こんな商売が100年程前に実在したわけで、おそらくその何割かは昭和の前半まで存在していたのであろうと思われる。そういう意味では“文化史”としての側面ももっているのだと思う。
木村荘八ほかの挿絵も味わいのあるもので、当時の様子を直感的に知るうえで貴重な資料となっている。また当時の風景を写す写真も挿入されており、その古ぼけたさまがなかなかに印象的である。
以前にも書いたが、ちくま学芸文庫は本当に資料性の高い、いいタイトルを収録していると思う。この間にいくつもの“ヒット本”をこの叢書から得た。まだまだ読みたい本が目白押しだ。そういえば本書の続編も出ており、いっしょに購入した。文庫としては価格がやや高いのが難点だが・・・。これからもどしどし良書を収録・刊行してほしいものである。
【目次】
序 永井龍男 ・・・ 13
Ⅰ みせがまえ ・・・ 17 / Ⅱ こあきない・てじょくにん ・・・ 101 / Ⅲ ゆうらく ・・・ 163 / Ⅳ のみもの・たべもの ・・・ 215 / Ⅴ のりもの・ともしび ・・・ 280 / Ⅵ きぐすり ・・・ 329 / Ⅶ そのほか ・・・ 353
あとがき 379