戦後精神の光芒 丸山眞男と藤田省三を読むために


戦後精神の光芒―丸山眞男と藤田省三を読むために
【タイトル】  戦後精神の光芒 丸山眞男藤田省三を読むために
        はてな年間100冊読書クラブ−No.047  
【著者】    飯田泰三
【出版社】   みすず書房
【発行年月日】 2006年3月10日
【版型 頁数】 A5版 385頁
【版 刷】   初版1刷
【ISBN】    4622072025
【価格】    6090円
【コメント】
著者は法政大学法学部教授、政治思想史、日本思想史専攻。東京大学法学部出身で、丸山の教え子になるようだ。
本書は著者が“戦後思想”についてまとめた論文を再構成、改訂して編集したもの。第1章は両先生以外の戦後思想に関する論稿をまとめたものである。出版人としての岩波茂雄*1下中弥三郎*2の思想、文人内田百輭*3、哲学者・古在由重*4の思想などにふれている。第2章が丸山に関する論考、第3章が藤田に関するものである。
丸山・藤田ともに戦後思想界の大御所として大きな足跡を残した。両者ともに以前より気になっていた思想家で、死ぬまでには主要な著作を読んでおかねばと思っていた。今回ちょうどタイミングよく本書が発刊されたので、市立図書館にリクエストした。
丸山は「日本政治思想史研究」などの名著が知られている。また雑誌「思想の科学」では鶴見俊輔らとともにその設立、運営に名を連ねている。また没後10年ということなのかこの間に丸山の業績や人となりを紹介するものが数冊出版された。
藤田については多くを知らなかったが、鶴見との共同研究「転向論」が名高い。両名とも先に上げた『戦後思想の名著50』にその著作が入っている。
本書のような解説書、手引書の類より先に原典に当たる方が大事かもしれないが、一応の準備、予備知識としてこういった本を活用しようと思った。なお両者とも大部の著作集*5が刊行されているし、丸山については対談集*6、講義録*7も出版されている。今後の読書計画に組み入れたいと思っている。
【目次】
はしがき ・・・ 酈
Ⅰ もう1つの「戦後」
方法としての忘却 内田百輭における記憶の構造 ・・・ 2 / 下中弥三郎と「大百科」の時代 「イデオロギー」と「大衆」の時代のはじまりの中で ・・・ 16 / 岩波茂雄と「岩波文化」の時代 ・・・ 37 / 古在由重の「苦難の道」 丸山眞男との対談 ・・・ 70 / 中村哲の生涯と学問 ・・・ 84 / 戸谷敏之のこと 108
Ⅱ 丸山眞男
丸山眞男と「戦後民主主義」・〈市民〉 ・・・ 118 / 丸山思想史学における鎌倉仏教論の位置 原型=古層論との関連において ・・・ 133 / 丸山眞男の「武士のエートス」論 ・・・ 167 / 丸山眞男「異端」論のⅠ断章 「中国における「異端」の字義をめぐって(天国からの衛生中継)」解題 ・・・ 187 / 丸山眞男ナショナリズム論 1949年度「東洋政治思想史講義録」の世界 ・・・ 199 / 丸山眞男の文化接触論・古層論と「伝統」の問題 ・・・ 234 / 間宮陽介『松山眞男−日本近代における公と私』書評 ・・・ 248
Ⅲ 藤田省三
藤田省三の時代と思想 韓国の読者のための解説 ・・・ 252 / 藤田省三の「転向」論 ・・・ 272 / 藤田省三における「戦後精神の経験」(一九五〇−一九七五) ・・・ 280 / 藤田省三の「精神史的考察」 ・・・ 330 / 藤田さんと廣松保さん ・・・ 339 / 藤田さんとの出会い(一) 徐京植民のインタビューに答えて、宮村治雄氏と ・・・ 343 / 藤田さんとの出会い(二) ・・・ 356 / 藤田省三を悼む ・・・ 362 
あとがき ・・・ 365

*1:岩波書店の創業者、その出版に対する思想はアカデミズムの何たるかと併せて、今なお高い評価を受けている。またその強烈な個性、考え方は同社社員に根強く徹底され、この出版社の社風は岩波茂雄の思想そのものといえるほどである。

*2:平凡社の創業者、やはり“百科辞典平凡社”といわれる名門出版社の社風を確立した人である。

*3:夏目漱石門下の小説家、随筆家。日本近代のエッセイストの草分け的存在。

*4:マルクス主義共産党系の人らしいが詳しいことは知らない。

*5:丸山眞男集・岩波書店藤田省三著作集・みすず書房

*6:みすず書房筑摩書房

*7:日本政治思想史講義録、東京大学出版会