リアル小規模書店とネット書店


7月9日に新聞ネタの『ネット書店で本が延命』という記事についてコメントした。よく考えるとこのままでは小規模なリアル書店の殆どは“廃業”せざるを得ないのではないかと思えてくる。どおやったら生き残れるか?について少し考えてみたい。
天気の良い休日に散歩がてら、ちょっとそこの横丁の本屋まで新刊本でも・・・と出かけていくのは良くあることだが、町の小さな本屋のいいところは気軽に行けて、面白そうな本を手に出来るということだろう。直接現物を手にして選べるというのは大変大きなメリットで、ネット書店では実現できないことだ。だから私もリアル書店の棚で本を探すほうが確実な買い物が出来ると思うし、楽しみでもある。
但し典型的な横丁の本屋さんは1/3が文庫・新書本、1/3が学習参考書、残りの1/3が一般雑誌・一般書という判で押したような構成・品揃えのところが多い。こういう店には専門書はまず置いて無い。1冊も無いということもありそうだ。どうして判で押したようになるのかというと、取次ぎ会社が持ち込んだ本をそのまま置いているだけだからということらしい。本という商品は多品種・小ロットなものだから全部の本を全国全ての本屋さんに置くことが出来ない。せいぜいが発行部数の多い文庫・新書、学習参考書、雑誌類、その他一般書の“売れ筋”を並べるぐらいしかできないんだそうだ。本屋さん*1の側でいろいろな考えがあって特定の品揃えをやろうにもブツが無いということになる。
もう一つ本という商品の特徴に“再販制度”というものがある。一定期間本屋に並べて、残った本は版元に送り返すという制度である。化粧品など幾つかがこの制度での販売を認められているが、極めて例外的な販売方法だといえる。取次会社は、返品の費用を考慮して、小部数発行の専門書類などはよく売れる都市部の大書店に配本してしまうので、町の小さな書店には回ってこない。また最近はネット書店*2がこういう専門書類を“押さえて”しまうのでなおさらであろう。そういう事情で、小さな書店の棚構成は全国どこでも判で押したような“景色”になってしまうのだそうだ。
さて小規模書店の生き残り法であるが、リアル書店の強み*3は①現物を手にして選べるということ、②本を売る人(書店員)との対面販売であること、人が行う木目の細かなサービスが可能なことであろうか。
①はいうまでもなく、良く吟味して買うという観点から重要だ。②ネット書店では買い物の際、基本的に人が介在しない。機械的に画面上のボタンをクリックするだけで本が家に届いてしまう。例えば、今度息子が中学に入学するに際して、この息子にとって最良の英和辞書、和英辞書は何かと聞こうとすると、ちょっと厄介だ。一々担当者にメールを送りコメントを返してもらうということになる。要するにネット情報とはいろいろと手軽に調べることは出来るが、データ化されてない情報は得にくい、つまり応用問題は苦手だということ。こういう時は対面販売のメリットが大きい。但し応対者(書店員)が本に詳しく、その質問に手際よく答えることが出来るという前提が必須であるが・・・。
結局。購入者は何を求めているのかというと、どんな本があって、どんなの内容で、自分のほしい本はどれかなどの“情報付き”の本がほしいのだと思う。現物が目の前にあれば手にして確認できるが、無ければ調べるなり人に聞かなければならない。本が決まれば出来るだけ簡単に迅速に入手したいと思っている。今のところリアル大型書店やネット書店はこういうニーズに出来るだけ応えられるようなシステムを構築しつつある。小規模書店もこの点を踏まえた経営を目指す必要はあるだろう。具体的に言えば、①書店員が本に詳しい、売れ筋、基本書などの基礎知識を身に付けていること、日々移り変わる本の情報をいち早く入手する術を知っていることなど、②品揃えについては独自のコーナーを1つ作る。例えば料理の基本書、売れ筋が揃っている料理本に強い店、歴史ものにうるさい店、ガーデニングの本が豊富な店など。こういった独自性は絶対これから必要だと思う。③客注を迅速にさばけるようにシステム化すること。これが出来ないと注文書は全部ネット書店に取られかねないだろなと思う。
以上勝手な思いを書いてしまった。いろいろ異論もあろうかとは思うが一読者の立場からの意見としてご理解いただけたらと思っている。

*1:要するに経営者、町の本屋の主人ということになる。

*2:これも例外無く大書店である。

*3:ネット書店に比較してという意味でのメリット。