ショージ君のALWAYS
【タイトル】 ショージ君のALWAYS はてな年間100冊読書クラブ−No.054
【著者】 東海林さだお
【出版社】 集英社インターナショナル
【発行年月日】 2006年4月30日
【版型 頁数】 B6版 253頁
【版 刷】 初版1刷
【ISBN】 4797671475
【価格】 1260円
【コメント】
これまで出版された単行本、文庫本の中から、『古きよき昭和』、『昭和という時代を懐かしむ』ために選ばれたエッセイのアンソロジー、傑作選である。歌手・なぎら健壱氏との特別対談『僕らの昭和』も収録。
アンソロジーだからこれまでに買い集めた本に出ているものばかりのはずだが、ついつい買ってしまう。この人の本は全て制覇したいと思っている。出来れば文藝春秋から漫画も含めた全集の決定版を出してほしいと思っているぐらいだ。作家の生前から全集を出版するという“非礼”で“悪どい”商法が売りの出版社だから、あり得る話だと思うが・・・。そうなるといったい全何巻になるのだろうか?相当に大部であるのは間違いない。だけど良く売れると思うね、きっと、絶対にね。殆どがオトーさん世代だろうけど・・・.出版年代別の配列もいいが本書のようにテーマ別の配列も面白いな。
この人、食い物の細かい描写やほのぼの感が豊かだというだけでなく、実は対談の名手なのだ。世に対談の名手といわれるモノ書きはいろいろいる。故人では、丸山眞男、吉行淳之介、司馬遼太郎・・・、他に鶴見俊輔、丸谷才一などなど。何れも大御所といえる大物ばかりだが、私は東海林さだおこそが近現代日本文学界における最大の対談名人だと思っている。椎名誠、林真理子、大江健三郎、赤瀬川原平、南伸坊、小泉和子・・・・・・、これまで読んだこの人の対談は何れも面白かった。どうしてだろうか?難しい文学論などは全く含まれない、個人的な体験談、生活感のある内容が多く、身近な話題なので分かりやすいのと、独特のユーモア、笑いのセンスがいい味なのだと思う。例えば、この人の著作によく出てくる、『ざまミロ*1』とか『ぐやジー*2』、『シーハ、シーハ*3』、『ハフ、ハフ*4』、『あジッ!!*5』、『ドーダ*6』などユニークな表現が面白い。
本職は漫画家なので、この人の作品には必ず挿入画が入っているが、これがまたいい味だ。決して絵が上手いというタイプではないが、場面場面での人の表情や弁当の構造、定食の盛り付け具合、サンドイッチの切り口など絶妙の味わいがある。どれもありふれた題材だが、主役である文章を引き立たせる名脇役としてきらっと光る輝きを見せる。そんな絵が多いのもこの人の特徴であるといえよう。
これまでに何度も書いてきたが、こういう文章を読むと本当に笑えるし、気分が晴れる。落ち込んでいる際の気付け薬あるいは一服の清涼飲料水のような存在である。だから手元から手放せない。いつも身近な所にあって、とても役に立つ本だと思っている。
【目次】
食べ物
ラムネの流儀 ・・・ 8 / 干し芋の作法 ・・・ 13 / たかがコロッケ、されど・・ ・・・ 18 /
伝統を誇る菓子パンを総括 ・・・ 24 / 懐かしやキャラメル ・・・ 30 /
追悼の「ワタナベのジュースの素」 ・・・ 35
場所
衝撃!食堂車廃止 ・・・ 42 / フレーフレー「聚楽」 ・・・48 /
おじさんたちのディズニーワールド ・・・ 54 / 葛飾・柴又・だんご有情 ・・・ 66 /
がんばれ、デパート大食堂 ・・・ 71 / 下町バアチャン劇場 ・・・ 77 /
特別対談
東海林さだお×なぎら健壱 僕らの昭和 ・・・ 93
ヒト
別府航路の新婚さん ・・・ 120 / チリ紙交換記 ・・・ 137 / 風邪について ・・・ 141 /
六十代の同窓会 ・・・ 157 / ビワ食う人々 ・・・ 173 / 運動会のお弁当 ・・・ 178
モノ
骨董入門 ・・・ 186 / 下駄論 ・・・ 199 / さようなら、マッチ ・・・ 214 /
シャベルの時代 ・・・ 226 / コタツ ・・・ 242 / 旅のハシは食べ捨て ・・・ 248 /
*1:ザマを見ろの東海林さだお的省略形。いかにも突き放した感じが出ている響きがある。
*2:歯ぎしりするほど悔しい様を意味する東海林さだお的形容詞。各方面で用いられつつある新語である。
*3:美味しいものをたらふく食った後に、爪楊枝で歯をあたる様を表現する東海林さだお的擬態語。爽快感と満足感が感じられ、大変に優れた言葉であると各方面から絶賛されており、借用して用いている文芸作品も多い。
*4:熱々のおでんなど、旨いものにかぶりついた際に発する東海林さだお的形容詞。熱々で旨い様が上手に表現されている語として各方面で絶賛を浴びている。
*5:大変に気温が高く、へばっている時に用いられる東海林さだお的形容詞。やはりモーレツな暑さと疲れきった様が印象的であると文学界で高く評価されている。
*6:どーだ凄いだろを意味する東海林さだお的省略形。相手に対してかなり優越感を持って見せつける際に用いられる。この言葉の用法・用例を正しく・深く研究するために日本ドーダ学会が設立されている。