鳥類の起源と進化  


鳥の起源と進化
【タイトル】  鳥類の起源と進化   はてな年間100冊読書クラブ−No.060 
【著者】    アラン・フェドゥーシア
【出版社】   平凡社
【発行年月日】 2004年7月7日
【版型 頁数】 A5版 631頁
【版 刷】   初版1刷
【ISBN】    4582537154
【価格】    7770円
【コメント】
大著である。日本ではどういうわけかこういう目的で書かれた鳥ばかりの本が少ない。一般的な図鑑の類や応用に主眼を置いた家畜としてのニワトリなどに関する栄養、生理、繁殖に付いての本ならあるが、基礎的な鳥類の生物学、進化学の本となるとなかなか見当たらない。欧米の科学界、大学教育・研究の優れた点は、常に最新の話題を盛り込んだ“総括的”な教科書や一般向けの啓蒙書を出版することについて、研究者それぞれが熱心だということだろう。7年毎に与えられる、『サバティカル・イヤー』という制度が大きな意味を持っているといわれている。
本書は古生物学と比較解剖学の観点から鳥類の起源と進化を論じている。著者によれば、主として古生物学者の主張する“恐竜起源説”があるが、これには無理があるという。即ち鳥類の直接的な祖先の出現の方が、恐竜起源説の主役達の出現より7500万年も早かったということによるらしい。また鳥が空を飛ぶようになったのは、小型の鳥類が樹上からの滑空することに起源したという。これも地上から飛び立ったのだとする説と真っ向から対立するが、どうやら著者らの主張のほうが説得力があるようである。
進化の仕組みの説明で『収斂進化』という現象がある。生態学的環境が似ている場合に別の系統の生物が同じような形態に進化してきたということで、爬虫類の魚竜と哺乳類のイルカ、クジラなどは典型的な例で、形態的には大変に似た形に進化している。著者によれば、鳥類はこの収斂のオンパレードであるという。これまで猛禽類に分類されてきたタカとフクロウはかなり離れた系統に属するらしい。
1〜3章で鳥類の構造など一般的な性質・系統などの議論が説明され、4章以下で歴史的な順序で鳥類に起きた変化、即ち進化の過程が説明される。9章ではなぜか最新の話題として、先日NHKスペシャルの『恐竜温血説』のエントリーで紹介した、ティラノサウルスに毛が生えていたなどどの研究結果についての論稿がある。果たして鳥は羽毛をまとった恐竜なのか?
こういった鳥類全体に渡る本自体が少ない中で、本書は大変にユニークで貴重な存在になるだろうと思っている。科学読み物としても大変に面白く、『鳥の変化の物語』として、ぜひ生物好きの読書子にお薦めできる本だと思う。著者はノースカロライナ大学チャベルヒル校生物学部教授、古生物学、鳥類学専攻。原書は全米出版協会の学術書部門最優秀賞を受賞するなど大変に評判になった本で、冒頭に大鳥類学者、進化学者のエルンスト・マイヤが推薦文を寄せている。巻末には膨大な参考文献も引用され索引も完備しているので、更に進んで勉強したい向きにも重要な参考書になるだろうと思う。
【目次】
はじめに ・・・ 4
日本語版に向けて ・・・ 11
第1章 羽をまとった爬虫類 ・・・ 15
第2章 鳥類の系統 ・・・ 67
第3章 飛行の始まり ・・・ 131
第4章 白亜紀の鳥類 ・・・ 197
第5章 フラミンゴ、カモ、長脚のシギ類 ・・・ 271
第6章 飛べない鳥の進化 ・・・ 315
第7章 猛禽類 ・・・ 380
第8章 陸鳥の出現 ・・・ 417
第9章 最新の発見:T・レックスは巨大ミチバシリだったか? ・・・ 493
訳者あとがき ・・・ 538
図と表の出典・協力者 ・・・ 540
参考文献 ・・・ 551
索引 ・・・ 616

ニワトリの動物学 (アニマルサイエンス)