明治の若き群像 森有礼旧蔵アルバム  


明治の若き群像 森有礼旧蔵アルバム
【タイトル】  明治の若き群像 森有礼旧蔵アルバム
        はてな年間100冊読書クラブ−No.061  
【著者】    犬塚孝明 石黒敬章
【出版社】   平凡社
【発行年月日】 2006年5月22日
【版型 頁数】 A5版 286頁
【版 刷】   初版1刷
【ISBN】    4582833306
【価格】    3570円
【コメント】
森有礼*1薩摩藩士にして、若くして英国、米国に留学し、帰国後政府要職を歴任、子爵となる。のち第一次伊藤内閣では日本初の文部大臣となる。本書はその森家に伝わる明治期の写真を基に当時の時代を語る“明治の群像”である。
登場する人々は有名・無名を問わず、多彩な顔ぶれで、森の広い交友を物語る。しかも皆若い。多くは英国、米国に“公費”で留学・視察に派遣されたエリート層・裕福層だった。これからの日本を支えるため欧米で勉強すべく、海を渡った人々である。高い志と意欲に燃えた若人達というイメージか?他にも日本人とかかわりの深かった英国人、米国人の写真もある。
当時の流行りなのか、真正面よりやや斜めに構えてカメラに向かい、椅子に腰掛けた姿が殆どである。中には欧米人のように足を組んだスタイルのものもいる。だいぶ気取った感じがするが、その古ぼけた味わいを加味し、当時の彼らの地位などを考慮するとそれもうなづける。皆洋風というか“ハイカラ”を見せ付けたいのだ。
岩倉具視伊藤俊輔(博文)、大久保利通木戸孝允など明治期の大物政治家がいる。若き日の高橋是清新島襄がいる。その他政治家、有力藩士、実業家、裕福層の子弟など当時留学生のさきがけとなった人々の古ぼけたポートレートが印象的だ。
中には他で見知った面々もいる。桜井錠二*2山川健次郎*3、津田梅子*4など教育・研究関係者もいる。それから当時の風景写真もある。何と多彩なことか・・・・・・。
こういう写真を眺めていると、当時の様子がイメージとして視覚的に描かれるので、具体的に頭で理解するのに効果的だ。だから説明文は短くても良い。著者の一人犬塚は鹿児島純心女子大学国際人間科学部教授、近代日本政治外交史、比較文化史専攻。著者略歴を読むとだいぶこの森有礼に入れ込んだ研究をしてきたようで、森関係で幾つかの本も出版している。
このような本に接したのは初めての経験だ。何か古ぼけた写真が一杯並んでいるが、印象は明瞭だ。明治期の日本のある面での姿、支配者層あるいは裕福層という面から見た“近代初期の留学生の時代”を彷彿とさせる。そういう意味で面白くまた貴重な資料であると思う。
【目次】
「視想」する人。森有礼 −カルト・ド・ビジッドの世界 犬塚孝明 … 7
第一章 写真が語る英米留学の日々 … 7
第二章 日本人留学生とアメリカの人々 ・・・ 43
第三章 古い日本、新しい日本 ・・・ 119
第四章 西欧への眼差し、教育への「視想」
森アルバム写真見聞録 石黒敬章 ・・・ 211
参考文献 ・・・ 245
あとがき ・・・ 246
人物・事物紹介および索引 石黒敬章+編集部 ・・・ 285

ビジュアル・ワイド 明治時代館 (ビジュアル・ワイド 明治時代館(全1巻))

*1:もりありのり

*2:東大教授、日本人最初の理学博士、分析化学専攻、後に日本化学会の前身、東京化学会を創設、初代会長となる。

*3:東大教授、のちに同大総長、物理化学専攻

*4:津田塾大学創始者、英語学