20世紀 欧州大戦


20世紀欧州大戦 (中公文庫)
【タイトル】  20世紀 欧州大戦 はてな年間100冊読書クラブ−No.063
【編著者】   読売新聞20世紀取材班   
【出版社】   中央公論新社(中公文庫BIBLIO S17-2)
【発行年月日】 2001年7月25日
【版型 頁数】 文庫版 269頁
【版 刷】   初版1刷
【ISBN】    4122038626
【価格】    680円
【コメント】
読売新聞連載記事を基にした8巻本を再構成して12巻の文庫化した第2回配本。世界大戦前夜としての欧州の動きを追う。コンパクトな中にも重要項目を逃さない編集となっており、手っ取り早くこの時期の世界、特に欧州の情勢を知るにはとても良い本だ。元々が新聞記事という性格上、より多くの読者を想定した文体、用語で構成され、読みやすい日本語がテンポ良く解説するので、一気に読ませる感じがする。但し1項が短く読み切り型の構成なので、全体像を掴むには一貫性にやや難があるカも知れない。多数の著者の合作である事も統一感にややマイナスか?
この時期の欧州で最も重要なのがやはりナチスヒトラーの台頭だろう。帝国化、戦闘化を加速したこの政党はこの時期どんどん成長し、影響力を高めていった。イタリアのファッショ化、スペイン内乱もその傾向に拍車をかけたようだ。ナチス台頭の歴史についてはヒトラー・「我が闘争」・角川文庫に詳しい。
意外だったのは、欧州政治においてトルコの存在が重要な因子になったということだった。そういえばもっと古くから、ローマ時代よりトルコの影響力は大きかったはずなので、それも有りかと思える。
ざっと見渡すと、よくあるナチス独逸の動きとその周辺、列強の対応という図式の記述がややマンネリ過ぎて面白味に欠けるかもしれないね。
次の第3巻はいよいよ日本が主役となる「大日本帝国」、第4巻は「大東亜共栄圏」、第5巻は「太平洋戦争」だ。私の昭和史もこれからが佳境となるだろうと思っている。
【目次】
1 第一次世界大戦
ユーゴ分裂 ・・・ 10 / 近代戦 ・・・ 17 / 軍の変質 ・・・ 24 / ベルサイユ条約 ・・・ 39 / 
超インフレ ・・・ 37 / 帝国解体 ・・・ 44 / 列強の野望砕いたトルコの国交 ・・・ 51 / 
最後の偶像 … 60 / エベレスト挑戦 65
2 大戦前夜
米国大恐慌 ・・・ 76 / ニューディール ・・・ 83 / 保護主義 ・・・ 90 / 年金遠征軍 ・・・ 94 / 
ドイツ恐慌 ・・・ 98 / ケインズ理論家の決算 ・・・ 106 / オーストリア恐慌 ・・・ 114 / 
ファシスト党の新ローマ幻想 ・・・ 121 / スペイン戦争 ・・・ 125 / 
対立回避図る宥和政策 ・・・ 135 / ナチ五輪の幻影 ・・・ 142 / 
処刑台に消えたスパイ王カナーリス ・・・ 155
3 第二次世界大戦
ナチスホロコースト ・・・ 166 / 漏洩した独ソ密約 ・・・ 172 / 独仏の確執 ・・・ 188 / 
ナチス対英和平攻勢の挫折 ・・・ 195 / ヒトラーの世界観映す絶滅戦 ・・・ 202 / 
無視された対ソ侵攻警告 ・・・ 208 / 「命のピザ」とユダヤ難民 ・・・ 214 / 
市民殺傷狙う無差別爆撃 ・・・ 222 / 米国孤立主義真珠湾」で幕 ・・・ 230 /
ノルマンディー上陸作戦 ・・・ 236 / 巧みに利用された民族感情 ・・・ 240 /
略奪された文化財・流浪の旅路 ・・・ 248
参考文献 ・・・ 263
執筆者・掲載日一覧 ・・・ 268

わが闘争(上)―民族主義的世界観(角川文庫)